こいつっつー女

「っあー、終わった…」


カカシさんから笑顔で押し付けられた雑務がひと段落ついて凝った背中をぐん、と伸ばした。
どんだけここにいたっけか?何度ここで日が昇ったはっきりと思い出せねぇほどいたってことはたしかだな。ったくどんだけ溜め込むんだっての。まぁカカシさんの目の下の隈を見ちまえばちょっとぐらい手伝ってもいいかなんて俺もいんだけどよ。そんでも疲れたことと寝不足なことはたしかでふわっとひとつ欠伸が出る。


「ふぁーあ。おっす、シカ」
「!…なんだ、お前かよ」
「ずいぶん眠そうだね」
「そっちもな」


同じように欠伸をしながら黒い上着を靡かせて現れたのは同期のミチル。
男みたいにさばさばしためんどくさくねぇ女、んで今や暗部の総隊長。同期の中じゃこいつがいちばんの出世頭だ。十四のときに暗部に入って以来神出鬼没になっちまったこいつと会うのは簡単な話じゃねぇ。いのもサクラも「ミチルはどこ!?」なんて常に目を光らせてるっけか?


「久しぶりじゃねぇか、どうしてたんだよお前」
「あー、ずっと暗部棟にこもってた。最近だるい任務が多くてさ。今日も砂の総隊長との会議が終わったとこ」
「そうかよ」
「ここ数週間まともに寝てないっつの」


また欠伸しながら器用に煙草に火をつけるこいつをどうも同い年には思えねぇ。落ち着き払ってるっつーかやる気がねぇっつーか。そんでもその実力は折り紙つき。“木ノ葉の鬼神”っつー大層な通り名までついて、その姿を見た敵はもう生きちゃいらんねぇとまで言われるほどだ。けど昔からだるいだるいと欠伸をするこいつを知ってるせいかどうもそんな風には思えねぇわけでよ。


「つーかこんなとこいていいのかよ。サツキのやつまた怒んじゃねぇの」
「いいんだよたまには。あたしを見つけらんないあいつが悪い」
「…マジでやる気ねぇなお前」
「あんたにゃ負ける」


もう数年前にもなる大戦の時、こいつは“忍連合暗部隊”っつー各里の暗部を集めた本隊とは別の隊の部隊長についてやがった。実力、人望、統率力と部隊長になる人間に必要な素質は全部持ってたせいか五影全員のお墨付きだったらしい。んでも若い上に女だっつー理由で下には反対意見もあったらしいが、あの雷影が「こいつで行く」って言い切ったって話でよ。どこまでも不思議なやつだっつの。


「ね、シカ」
「あ?」
「ひさしぶりに昼寝しに行かない?」
「!」


にっ、と笑ったこいつにどきっとした俺がいて。
いつだったっけかな、俺がこいつにこんなめんどくせぇ感情を抱いちまったのは。それこそつい最近のような気もするし思い出せねぇほど昔だったような気もする。

つまるところ、俺はこいつに惚れてるわけでよ。


「めんどくせぇ…」
「出たよそれ。ほんっと飽きないね」
「けど行くか。俺もそろそろ限界だしな」
「おう!」


重い腰を上げて歩き出せば「猫背直せ」って俺の背中をばしっと思い切り叩いて笑ってやがるバカ。
「痛ぇなおい」って悪態つきながらも久しぶりのそんな触れ合いに嬉しく思ってる俺はこいつよりも相当バカかもしんねぇ。





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