ふたりの心臓は似過ぎている
「はぁ?愛してるよゲーム?」
「おう!なんかさ、なんかさ!最近流行ってるゲームらしいんだってばよ!」


ムフフ、なんてにやけた面してやがるナルトにはぁ、とため息をついた。
任務後に待ってた雑務を終えてやっと帰路についた途端、タイミングを計ってたように「おいシカマル!いいところに来たってばよ!」なんてナルトの声にげんなりしたのはついさっき。

そのゲームのルールは、二人で向かい合って一人は「愛してる」と言い続け、相手はそれに対してリアクションせず「もう一回」、それを繰り返して先にリアクションをとる、もとい照れた方が負けっつーわりとシンプルなもんだ。

…とはいえ。


「やるわけねーだろ、んなもんめんどくせぇ。俺ァもう帰って寝てぇんだよ」
「なっ、そりゃねーってばよシカマルぅ!」
「おまえと違って俺は雑務までやってんだ。忙しすぎて疲れてんだよ帰らせろ」
「んなこと言わずにさ!ちょっち付き合ってくれればいいんだって!」
「だからやらねーって、他当たれ。キバあたりなら喜んでやるんじゃねーか」
「…ちっ、つれねーってばよシカマル。つまんねぇー」
「言ってろ」


「そんじゃあな」と口をとがらせるナルトに手を上げて背中を向ければ、「ああっ!いいところにいたってばよ!!」とナルトが標的を変えたらしい声が聞こえる。捕まっちまうとは運がねぇな、なんて思いつつ、俺にゃもう関係ねぇと欠伸をかましながら足を進めていると、「え?愛してるよゲーム?」なんて声が聞こえてきてぴたりと止まった。


「そそ!ルールはえーっと、愛してるって相手の目ェ見て言ってそんで…」
「…」
「……とにかく愛してるって言うゲームなんだよ!」
「あ、愛してるって言うの?誰に?」
「それはお前……誰がいい?」
「私に投げるの!?」


ぎゃーぎゃーと騒ぐ二人を凝視した。ナルトと話してやがるのは、同期のナマエ。つい先日俺の恋人になったばっかのやつだ。付き合ってまだ日が浅ぇからっどっか出かけたりましてや二人で会ったこともそんなねぇ感じだってのに、なんでこのタイミングなんだよ…。


「でさ、でさ!ナマエは誰に言いてえんだよ!愛してるって!」
「え!?そ、それは…」
「んな照れなくていいってばよ!おまえが愛してるって言いてえ奴俺が呼んでくっからよ!」
「俺が言う」
「!!」
「へ?」


めんどくせぇし疲れてっし早く帰って寝てえってのに、あいつが絡むとどうも体が勝手に動いていけねえ。たじたじのナマエの前に立ってナルトに宣言しちまったしよ。


「あるぇシカマルぅ、おまえ帰って寝るんじゃなかったっけー?」
「うっせぇやるっつってんだよ早く始めろバカ」
「んふふ、わかったってばよー。そんじゃあ、シカマル、ナマエ!さっそくはじめるぜぇ!」


そう言って俺とナマエと向かい合わせたナルトは、にたにたと人の悪い笑みを浮かべながら俺たちの顔を見比べてやがる。ったくマジでいい性格してやがるぜこいつ。


「そんじゃあ!愛してるよゲーム、スタートだってばよ!!」
「……」
「……」


いざ始まっちまうと、照れすぎて顔すら見れねえ。やべ、俺ってこんなに女々しかったっけか?男ならすぱっと愛してるっつって、ナマエが私も、なんて笑って抱き着いてきてそれで終わりでいいじゃねぇか。言えよ俺、言っちまえよ俺…!


「あら、あんたたち何してんの?」
「おっ、サクラちゃんにいの!いいところに来たってばよ!」
「!」


まじクソめんどくせぇタイミングでやってきたのはサクラといの。同期の中で唯一俺たちの関係を知ってるやつらだ。こいつらはナマエと仲良いから前から相談なんかされてたらしくて、「あんなやる気も何もないクソ男やめときなって」とか失礼極まりねぇこと布教してやがったんだって後から聞いてわりと本気の殺意が芽生えちまったんだよな。


「今さ、今さ!ナマエとシカマルが愛してるよゲームやってるんだってばよ!」
「あーそれって今流行ってるわよね。何、あんたそれにこの二人を巻き込んだの?」
「巻き込んでねぇってばよ!俺がナマエに声かけたらシカマルが食いついてきてさぁ」
「へェー。シカマルが食いついたんだァー」
「へェー」
「……悪ィかよくそ」
「「べっつにー」」


にたにた笑いやがってちくしょう。この二人が来て余計言いにくくなっちまったじゃねぇか。
ちらりと目の前にいるナマエに視線を向けると今にも卒倒しそうなほど顔が真っ赤になっててよ。つられて俺も元々熱かった顔がさらに熱くなるわけで。


「なにしてんだってばよシカマル!早く言っちまえよ!」
「そうよ!あんた今を逃したら絶対一生言わないでしょ!」
「今しかないでしょ!ほら、早く早く!」
「…」


めんどくせぇ…!
こんなことなら始まってすぐに言っちまえばよかったぜ。

だが、俺も男だ。いのじゃねぇが、ここで言わなきゃまじで一生言えねぇ気がする。いや絶対言えねぇ。腹くくれ、言っちまえよ、俺。


「あー、その、なんだ、」
「!」
「……愛して、る」
「…っ」


目の前のナマエは俺の言葉に服のすそをきゅっと掴んで俯いちまってる。
頼む、頼むからナマエ、これ以上続けさせないでくれよ…。


「…も、」
「!」
「お?」
「え?」
「……もう、一回」
「!?」


唯一ナマエの感情が読める耳はもう赤すぎて赤くも見えねぇ。
…しまった。こいつが負けず嫌いだって忘れてた。


「…ねぇ、ナルト…」
「なんだってばよサクラちゃん…」
「見てるこっちが恥ずかしいんだけど!しゃんなろー!!」
「ぶへっ!?」


頬を赤く染めるサクラにぶっ飛ばされたナルトは別の意味で赤ぇ顔してやがる。そんな二人の横でいのは口に手を当てて「ナマエったらやるわね」なんて優しい目してやがるわけでよ。
思わぬ恋人からの反撃に恥ずかしいやら帰りたいやらいろんな感情が一気に高ぶった。


「っだから!愛してるつってんだよバカ!!」
「っもう一回!」
「何度も言わせんな!愛してる!!」
「もう一回!!」
「愛してる!!」
「まだ、もう一回!!」

「「「もうやめてくださいお願いします」」」
「「!」」





(なにもうあのウブ二人が頑張ってるの…!恥ずかしすぎてこっちが倒れそうよ!)
(ほんっとしゃんなろーすぎてずっとあの二人応援する)
(…俺ってばこれ以上身体が持たねぇ…)

((……お、終わったぁ))

fin.
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