「いい加減、家ばっかりも飽きてきたねぇ」
「だねぇ」


何度目かもわからない映画を見ながら言った何気ない一言に、カカシから相槌が入った。
自宅に居続けて早一週間。手持ちの本も読み切ったし、もともとインドアな私としてもそろそろ外の太陽を拝みたい気持ちがある。


「ねぇねぇ。どこか出かけない?」
「うーん、それもいいけど、あんまり出ないほうがいいんじゃない?」
「えー」
「おまえも知らないわけじゃないでしょ。今は出ないほうがいいの。おとなしくしてようよ」
「…お日様浴びたい」
「ベランダ出る?」
「外食したい」
「ポトフ作ってあげる」
「新しい本買いたい」
「イチャイチャパラダイスという素晴らしい書があってだな」
「お買い物行きたい!」
「いいから座りなさいっての」


勢いのまま立ち上がった私は座っていたソファに再び誘導されポスンと腰を下ろした。
そしてカカシは読んでいたイチャタクを閉じて私に視線を向ける。


「いい?チハル」
「…」
「気持ちは嫌って程わかるけどね、今、世間は危険な病気を恐れてみんな家で我慢してるんだよ。お年寄りから小さな子供まで、みんなね」
「…うん」
「今我慢しきれなくて病気にかかってしまったら、苦しむのはチハルだけじゃないんだよ?」
「…」
「チハルは、俺が体調崩すといつもすごく心配してくれるでしょ。それと同じだよ」
「…ん」
「それにおまえは今、一人じゃないんだから」
「……わかったよ。おとなしくしてる」
「ん、いいこ」


そう言ってカカシははにかんだように笑い、私の目立ち始めたおなかを愛おし気に撫ぜた。


「ね、名前、どうする?」
「男の子か女の子かもわかってないのに?」
「俺はねぇ、どっちでももう決まってるんだよねぇ」
「そうなんだ。どんなの?」
「んー?んふふ、内緒」
「なーんだ」






fin.


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