私の旦那さんは、「だるい」「すみません」が口癖のちょっぴり面倒くさがり屋のこの雲隠れの長――雷影、ダルイ。
三代目雷影様から“雷”を腕に刻むことを許された唯一の忍で血継限界の嵐遁を操り、先代の四代目エー様もその実力に一目置いていて彼の右腕として長い間活躍した。外では無表情で淡々としてるから冷たい人だと勘違いされやすい彼だけど、家で見せる顔は一味も二味も違うわけで。


「ほらネムイ〜〜、パパですよ〜〜」
「ぱ、ぱっ!」
「! チハル、チハル…ネムイがしゃべった!パパって言った!」
「言ったねぇ」
「…雷影がこんなんでいいの、チハル」
「仕方ないよねぇ、これが本当のダルイだもん」
「……はぁ。先代がこの姿を見たら…」


雷影の補佐になって、いつまで経っても来ないダルイを迎えに来たシーが顔を手で覆って呆れながらそう言う。口ではそう言いながらも、ダルイと長い付き合いの彼はなんだかんだ優しくその光景を見てるわけでこっちまで嬉しくなる。


「ほらダルイ、そろそろ行かないとまたオモイが爆発するよ」
「…ネムイ、連れてっちゃダメ?」
「お前そんなんしたら仕事しないだろ」
「……はぁ、だるいなぁ」
「あとでネムイと一緒にお弁当持ってくからそれで我慢して」
「…本当?」
「本当。ね、ネムイ?」
「だー!」
「よしシー、行きますか」
「…その腕に抱いてる愛娘を離してから言え」
「……はは」


名残惜しそうに肩を落として私にネムイを預けたダルイは、シーに引きずられるように玄関へと向かう。見送りに行こうとついていくその間にも恨めし気に娘の名を連呼するから天下の雷影も形無しだ。


「……遅いっすよダルイさん。ダルイさんに見てもらわなきゃならない書類たちが俺の目の前を占拠してあと二秒遅ければ俺はあの書類の下敷きになって、」
「相変わらず重いねぇオモイ」


玄関をガチャリを開ければズーンと暗い影を背負ったオモイがお出迎え。
カルイが木ノ葉の秋道チョウジに嫁いでからというもの、ツッコミ役がいなくなったオモイは前にも増して重くなってるわけで。でも時折カルイから送られてくる娘、チョウチョウの写真を私に見せに来てデレるまでは回復したらしい。可愛い奴だ。


「へいへい。今行きますよっと」
「それじゃあダルイ、気を付けてね」
「あぁ、行ってきますよ」
「ネムイ、パパにいってらっしゃいって」
「きゃっきゃ!」
「……行きたくなくなっちゃうじゃないすか〜」
「うっせぇ!待ちくたびれた早く行くぞ!!」

「ネムイ〜パパのこと忘れないでくださいよ〜」
「んな短時間で忘れるかアホ!」
「ネムイがダルイさんのことを忘れたらダルイさんが仕事が手につかなくなってその焼きが俺に回ってきてついに俺が雷影になって…」
「ああもうお前ら本当めんどくさい!!」


ズルズルと二人を引きずっていくシーにネムイと一緒に手を振った。


「よしネムイ、パパにお弁当作ろうか!」
「あー、うー!」


ダルイそっくりの顔でくしゃっと笑うネムイをひと撫でして、我が儘だけど大好きな旦那さんの喜ぶ顔を想像して笑った。





fin.


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