「なぁカナメ、お前の家族ってほんっとすげぇよな!」
「…は?いきなりなんなの」



それは任務の帰り。
数度目となる隊長を務め疲労困憊のカナメは、里についてすぐそう言った同期の一人に思い切り眉をしかめた。



「だってさ、お前の親父さんは六代目様だろ?そんでおふくろさんはスペシャリストの五代目様が認めるぐらいの優秀な医療忍者。兄貴は俺らとそんな年も変わんねぇのにもう上忍だしよォ。で、妹のユリナちゃんだっけ?あの子ももうすぐ上忍になんじゃねぇかって噂になってんじゃん」
「ま、優秀なカナメちゃんも中忍の俺らとは違って特別上忍だもんなァ。俺らなんてちょちょーっと越して、お前もすぐ上忍になっちまうんだろうなー」
「…はぁ、僻むのはよしてよ。俺も俺なりに頑張ってんだから」
「はは!"戦術班期待の新人は六代目様のご子息!”だっけか?お前の性格を熟知してる俺らからすれば笑っちまう謳い文句だけどな」
「言えてる言えてる!」
「…うるさいよ」



両肩にのしかかるように腕を乗せてにたにたと人の悪い笑みを浮かべる同期二人にため息をつきながら、カナメは「ほら、早く報告書出して帰るよ」と促し火影邸へと足を進めた。

その道中、前方で二人がああだのこうだの話しているのを聞き流しながら、先程言われたことを思い出す。


父さんは、いわずもがなこの里の長である六代目火影。
現役の頃は、頭脳戦も体術戦もなんでもそつなくこなす木ノ葉きっての天才忍者だと持てはやされてたらしい。たしか昔に修行をつけてもらったときも、印を結ぶスピードやすべてにおける対応力が桁違いだと感じたっけ。父さんは俺の憧れだ。いつかは俺も、父さんみたいに里の人から、仲間から信頼されるような忍になりたい。素直にそう思う。そして、毎日寝る間も惜しんで里のためにって頑張ってる父さんを誇りに思う。

母さんは、医療忍術の世界では名の知れた人らしい。
五代目様が引退されてからはサクラ姉ちゃんと一緒に毎日遅くまで病院にいるし、緊急事態には率先して前線に出られるほど戦闘の腕も高い、らしい。俺は見たことないけど、何度か一緒に任務に行ったナルト兄ちゃん曰く、“ユヅキの姉ちゃんを本気で怒らせんじゃねぇぞ。ありゃ命がいくつあっても足りねぇ…”だったっけ。ユリナもそんな母さんにずっと修行をつけてもらってたから、サクラ姉ちゃんからも太鼓判をもらうほどの力をつけた。

そしてコウタ兄は、俺が一番尊敬してて、そして一番超えたい壁でもある。
今現役の木ノ葉の忍の中で、新たな世代を率いていく力を持ってる数少ない忍で、実力、人望、いろんな期待を背負って毎日任務に向かってる。最近よく聞くのは、ナルト兄ちゃんの次の火影はコウタ兄だってこと。父さんと同じくらいのカリスマ性と、みんなからの期待値がそんな噂を立ててるらしい。コウタ兄は否定してたけど、俺から見てもそう思う。だからこそ、悔しい。いつかきっと、コウタ兄に負けないくらい強くなって、きっと上忍になるんだ。少し自信のあるこの頭脳をもっと磨いて、コウタ兄に認めてもらう。それが今の俺の夢だったりする。



「そんじゃあな、カナメ!」
「またなー!」
「…あぁ」



報告を終え、夕日が照らす道を去る同期二人に背を向けるように片手をあげたカナメ。

今日もきっと父さんは帰ってこないだろう。母さんもたしか今日は病院の日のはずだし、ユリナと一緒に晩ご飯作ってコウタ兄を驚かせてやろう。

口布の下で優しく微笑みながら、手をポケットに突っ込んで慣れた家路を歩く。



「カナメ!!」
「!」



しばらく家に向かって歩を進めているとき、背後から突然かかった声にぴくりと肩を震わせて振り返れば、先ほど別れたばかりの同期の一人がゼェゼェと荒い息をしながら走ってくるのが目に映る。



「…そんなに慌ててどうしてったの、さっき別れたばっかでしょ」
「…カナメ、落ち着いて聞いてくれよ。俺もちょっと聞いただけだから、はっきりしたことはわからねぇんだけど、」
「…」



先程のようなおちゃらけた雰囲気とは打って変わったその姿に、カナメの背筋を嫌な予感がよぎった。

そしてその同期の二の句を聞いたカナメは、血相を変えて足の向く先を変える。



「――コウタさんが、意識不明で病院に運ばれたらしい」





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