「六代目ってさ、歴代最弱の火影って言われてんじゃん」
「!」


いつも通り、任務が終わってチームメイトと着いた帰路。どこかの誰かのそんな馬鹿にしたような声が聞こえて俺の足はすぐさま止まった。


「まー、あんまこんなこと言っちゃダメなんだろうけど、通り名の写輪眼ももうないしな」
「そうなんだよ。コピー忍者がコピーするものがないんだよな。なんであの人が火影になったんだろ」
「他になれる人がいなかったんだろ。参謀のシカクさんも五代目候補だった自来也様も亡くなったわけだし」
「ナルトがいるじゃん」
「まだ若いだろどう考えても。次期火影はナルトに決まってるんだから、その間の中継ぎなんじゃね?」
「はは!そうかもな」
「……」


怒り、なんてそんな生易しいものでは言い表せない感情が俺の中を巣食った。すると気づけば、そのくそ生意気などうせヘボに違いない男達の目の前に立っている俺がいて。すると俺の存在を知っているのか奴らは揃って「ひっ」と声を上げた。チームメイトが「落ち着けカナメ」と宥める声も俺の耳には届かない


「誰が歴代最弱だって?」
「そ、それはっ」
「誰が中継ぎだって?」
「…っ」
「あんたら六代目の何を知ってるわけ?六代目の何をどう見てそんなこと吐いてるわけ?頭悪いの?ちゃんと生きてる?どう考えたって中継ぎとかじゃなく相応しいのは父さんしかいないでしょうよ」
「…」
「他に誰ができるのか言ってみなよ。なぁ、言ってよ早く。なぁ」
「…っ」
「写輪眼があろうがなかろうが六代目は木ノ葉で最強の忍だよ。就任の時誰が異論した?してないよね。上層部も上忍衆も満場一致の可決だったよね。覚えてないの?」
「…」
「毎日毎日休みなく朝から晩まで火影室にこもりっぱなしで書類仕事してみなよ。寝る間も惜しんでずっと仕事してみなよ。あんたらに出来んの?俺には到底出来ないね」
「…」
「火影の仕事を一から百まで理解してそれ以上に強くなってから物言えよ。あんたら中忍だろ。俺より歳食ってんのになんで俺より階級下なんだよ。やる気ないのかよ」
「……」
「お、おいカナメ、その辺に…」
「は?今度はだんまりですか?さっきまであんなにペラペラ回ってた口はどこに行ったんだよ」
「……」
「俺は質問してんの。耳ついてる?ちゃんと俺の言葉理解出来てる?」
「……」
「俺より弱いくせに俺の憧れを侮辱すんな。吐いた唾は飲めないからな。あんたたちの顔は末代まで忘れない。覚えとけ」
「……す、」


「すいませんでしたーー!!!」
そう言って半泣きになりながら走り去っていく馬鹿どもの後ろ姿を眺めたところで虫酸が治まるわけもなく。会ったことも話したこともない他人にここまで怒りを覚えた自分も初めてで、一体どうしたらいいのかわからない。


「カナメ兄ー!」
「! ユリナ」


聞き慣れたそんな声のするほうを向けば、手を振りながら駆け寄ってくるユリナとその後ろから「お疲れ様」と来るコウタ兄がいる。


「カナメ兄、もう任務は終わったの?」
「…うん、今帰ろうとしてたところ」
「あっちに泣きながら走ってきた人達がいたけど、なにかあった?」
「……いや、何も無いよコウタ兄。帰ろう」
「うん」


「じゃあまた明日」と、きょとんとしたままのチームメイトに右手を上げ、三人で家路に着いた。



単細胞な馬と鹿




「……カナメは怒らせないどこう」
「……そうだな」

チームメイトがそう言って顔を青ざめていたことを、俺は数日後に知った。

fin.



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