数年前、突如出現したアラガミによって人類は滅亡の危機に陥った。
人々は生き残るため、アラガミへの唯一の対抗策として神機を開発。
ソレを扱うコトの出来る人間は限られてはいたものの、
こうして人類とアラガミとの存亡をかけた戦いが始まった。

……そんな飽きるほど聞かされた話を思い返す。
このご時世、神機使いの適合候補者として選ばれた人々は
選択肢などなく適合試験を受けることになる。
世間には軽いアルコールパッチテストのようなモノと公表されているソレは
下手すれば死を招くこともある危険なモノ。
今日もまた、硝子越しにもがき苦しむソレを見下ろしていた。



「……適合失敗か」



耳に届いた冷たい声。
黒いナニかに蝕まれ、人間の形を失い、そして最後に待つのはアラガミ化。
適合できなかった時点で救いようはナイ。
ケースから神機を取り出すオレにその人物は告げた。



「処分しろ」

「了解」



その命令に従い、未だ苦しみ続ける処分対象と対峙する。
「助けてくれ」と泣き叫ぶ。
自分が自分ではなくなっていく過程は残酷だ。
オレにできることはこれ以上苦しまないようにすることだけ。




「……すぐに楽になる」



所詮、救えないのだから。
地面を蹴り、振るった刀身に伝わってくる命を絶つ感覚。
飛び散った朱と鼻を突くような鉄の臭いは慣れたもの。
無表情に踵を返し、ずるずると神機を引き摺り歩く。

数えられないほどの罪を犯しても、
数えられないほどのアラガミを倒しても、
道具としてしか扱われることはナイ。




次の適合候補者が決まったと渡された書類。
その書類に記載されたその名前を無意識に口にする。



「……朱瀬リオ」





少年とカレが出会うまであと数時間。









終わり

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