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君の優しさ 1/2

エルザと二人で偵察任務に出たユーリスが帰ってきたのは、日付を跨いですぐの頃だった。
なかなか戻ってこないので心配になって、ずっと城門前で待っていた私は彼の姿を確認して安心すると同時に、右肩に付いた赤いシミに息を飲んだ。
怪我するなんて珍しい…。


「おかえり、大丈夫…?」

「アニス…、大した怪我じゃないよ」

「丁度いいや、アニス、ユーリスのこと頼めるか?俺は報告に行かないといけないんだ」

「あぁうん、任せて。エルザは自分の仕事しなよ。あとカナンも心配してたから、行ってあげて」

「あぁ、ありがとう」

エルザはそのまま急いで城内へ向かって走っていった。カナンの名前を出した時のエルザの顔は、写真に収めて皆に見せてやりたいと思うくらい、嬉しそうにニヤついていた。








「マナミアは寝てるし…とりあえず応急手当だけするね」

棚から救急セットを取り、ユーリスをベッドに座らせた。防具を脱ぐのを手伝って傷口を見てみれば、確かに本人の言う通り大した怪我ではない…けど、そのままにしておくわけにもいかない程度には深かった。

「痛そー…」

「別にもう痛くないよ」

「でも珍しいね。そんなに強かったの?」

「いや。ちょっとエルザが突っ込みすぎただけ」

「ほぉ…」

それじゃ明日エルザにはお仕置きしておかないと、と思いつつ、動かないでねと念押しして消毒した傷口に包帯を巻いていく。

「っ冷た!アニス、手冷たい!何したらそんなに冷たくなるわけ!?」

「え?ごめん。まぁちょっと我慢してて」

くるくると弛まないよう包帯を巻いていく。
肩から胸元にかけて、大きめの傷だったので結構大変…。
というか…普段は可愛い可愛いとからかってはいるものの、こうして鍛えられた体を見てしまうと、ユーリスも男の人だなぁなんて再認識させられてどぎまぎしてしまう。
魔法専門のくせに、こいつはしっかり鍛えているのだ。腹筋だってちゃんと割れてる。だからちょっと、頼もしく見える。
まぁ今は怪我人ですけど。


「……アニス、ずっと城門で待ってたの?」

「まぁ…心配だったし…」

「ふぅん」

「はい、おしまい。あんまり動かないでね」

包帯の残りを巻きなおして救急箱に仕舞い、棚に返す為に立ち上がろうとしたところで天地が逆転した。
同時にゴトリと箱が床に落ちる音が聞こえた。あぁ、中きっとぐちゃぐちゃになっただろうな…と、嬉しそうにニヤつくユーリスの顔を見ながら思った。さっきのエルザと大差ない表情だなぁ。

「…動かないでって言ったじゃん」

「解けてないけど」

「そういう問題じゃない!ていうか、怪我人は大人しくしてなさい」

「やだ」

「傷口が開いたらどう…んぅ」

ユーリスの唇が重なり、それ以上言葉を紡ぐことは出来なかった。
啄ばむ様なキスを何度か繰り返し、彼の舌が口内に侵入してくる。歯列をなぞり、舌を絡め取られればもう観念するしかなく、たどたどしくもそれに応えるよう舌を絡めた。
彼に従順な自分に心の中でため息をつく。

「ん…分かったから、ユーリスは大人しくしてて」

「…?」

ユーリスはよく意味が分からないというように、眉間に皺を寄せて見下ろしてくる。

「だから…きょ、今日は私がするから、怪我人は大人しくしてなさい!」

なるべく目を見ないようにそう言いきれば、ユーリスは吃驚したように一瞬動きを止めた後、面白そうにニヤリと口元を歪めた。



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