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移り酔い 1/4

「おい、ユーリス!お前もたまには飲めよなぁ〜!」
などとすでにベロベロ状態のセイレンがユーリスを攫っていってからおよそ10分。戻ってきた彼はぐったりとテーブルに突っ伏していた。ご愁傷様…。

「ユーリス、大丈夫?」
「あー……」

唸ったのか返事なのか分からない返答だ。これはダメそうだ。
そのうちセイレンから逃げてきたジャッカルも戻ってきて、倒れているユーリスを見て険しい顔をした。

「おいユーリス、大丈夫か?」
「………」
「返事が無い。ただの屍のようだ」
「勝手に殺すな………」
「お、生きてた」

何とか頭を上げたユーリスは、しばらく俯いたまま低い声で唸っていた。

「何か今日、セイレン随分飲むね?」
「あー、あいつ今日闘技場でボロ勝ちしてな……祝宴だと」
「祝ってないしこれで底をつくよね」

ジャッカルは苦笑いで肩を落とした。
テーブルは料理やら酒やら、とにかく散らかっている。その中から、少し離れたところにあった透明なグラスを取った。

「ユーリス、お水飲む?」
「ああ…もらう……」

水を飲んだからといってアルコールが抜けるわけではないんだけど、多少は楽になるし、何よりお酒を飲むと喉が渇く。
大人しくグラスを受け取ったユーリスは、中身を一気に飲み干した。

次の瞬間、ガンッ!とすごい音を立てて、グラスがテーブルに置かれた。
というかもはや落ちたような勢いだった。

「え……ユーリス?」

ぐらりとユーリスが傾く。
しかもこっち側に。

「ちょ、ちょっ…ユーリス!?」
「………」

座ったまま何とか受け止めた彼は重い。
何故に倒れたし。しかもわざわざこっちに。
その回答は、さっきのグラスを手に鼻をならしたジャッカルがしてくれた。

「これ、酒じゃね?」
「えっ……」
「アニス……トドメをさしたな」
「えぇー……」

そんなバカな。透明な酒があるわけ……あるね。うん、あったわ。
成人したばっかりの、今だ幼さの残るユーリスが一気飲みしたらそりゃ倒れるわ。
若干の罪悪感を感じていると、自分にもたれていたユーリスがもぞもぞ動いた。

「アニスだ……」
「え?」
「アニスがいる……」
「はぁ?……って」

ぎゅうーっと締め上げられ…違う、何故か抱きしめられていた。
首元に息がかかってくすぐったい。ついでにお酒の臭いに混じってユーリスの匂いがする。
色んな意味でこれはダメだ。

「あーもう…。ユーリス、もう休んだ方がいいよ」
「………」

返事がない。
はぁ、とため息をついて、カウンターにいるアリエルの方を見た。

「アリエル!部屋借りるね!勘定はセイレンで!」

アリエルは苦笑いで「わかったわ」と短く答えた。
「おいアニス!なんであたし持ちなんだよ!」と騒ぐセイレンをスルーし、ついでにニヤニヤしてるジャッカルも無視して、ユーリスに肩を貸して(ほとんど担いでいたけど)二階へ急いだ。




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