Chapter.01 1/5
薄暗い洞窟の奥。
その先に不思議な力が満ちる遺跡がある。
その遺跡の一角…何かの結晶が壁に張り付いた、祭壇状の少し開けた場所に人が立っていた。
その人物はフードを被っていて顔は見えないが、華奢な体格までは隠せず少女だということが一目で分かる。
腰には体に似合わず大き目の太刀が1本。使い込まれたそれは、少女の生涯が波乱に満ちていたことを無言で示していた。
「……ここに、異邦のものがあるのね。」
少女は辺りを見渡し他に道がないことを確認すると、小さくため息をついた。
今日はここまでか…と踵を返した時、入り口の方から複数の足音と声が聞こえてきた。
「………?」
しばらくすると、恐らく傭兵か何かだろう男女の二人組みが、アンデッドに追われながらこちらに向かってきていた。
「ここは私が食い止める…って、ひ、人!?なんでこんなところに…。」
向こうもこちらに気付いたらしい。
後ろを気にしながらもこちらを警戒していた。
それも当然か、こんなところにフードを被った怪しげな少女がいれば誰だって警戒する。
「まぁいい。エルザ、お前は他に道がないか探せ!・・・お前も戦えるんなら手を貸してくれ。どうせそこにいたらやられるぞ!」
女の方がそう叫ぶと、アンデッド達へ向かっていった。
エルザと呼ばれた男の方は手当たり次第に壁の方を探っている。
仕方がない。確かにここにいては巻き込まれる。
太刀を抜き、応戦する。
アンデッドに対し剣戟は効率が悪かったが、魔法が撃てる状況でもない。倒しても倒しても起き上がってきて切りがなかった。
「くそっ 行き止まりか…!」
「こんなところでっ!」
段々と敵の数が増え、捌き切れなくなっていた。
ふと、敵の後方で今までとは別の動きをした奴が目に入る。
ボウガンだ。
敵は前で戦う女の方へ、すでに狙いを定めている。
「……っ危ない!」
「セイレン!」
矢はまっすぐに、女の人を貫いた。