Chapter.15 1/5
グルグ船の薄暗い船長室で、目を閉じぼーっと考える。
今回のことで分かったこと。
私は意外と、涙もろい?
いやいや、そこじゃない。
近いけど、そうじゃない。
そうじゃなくて、私はあんなにも弱くて脆かったということ。
彼らの存在が、私の中で大きくなっていること。
私の目的はあくまで異邦のものを還すことだ。それなのに、こんなんじゃだめだ。
また目の前で死なれたりしたら、私はきっと立ち直れない。
ユーリスが死んじゃうんじゃないかと思った時、本当に怖かった。
怖くて、怖くて、辛くて、苦しくて。
全部投げ出したくなった。
何もかも投げ出して、逃げ出したくなった。
普通に暮らしていても、荒廃だって私が死ぬまでの間くらい持つだろう。
でも、だめだ。
それじゃあもう2度とこの星は元に戻らない。
そんなのはだめだ。
だから、やっぱり私は―――
「エマ。」
名前を呼ばれて思考を止める。
振り向くとユーリスが立っていた。
「…ユーリス。どうしたの?」
「いや、その……お礼を言ってなかったと思って。」
「…お礼?」
って何のだろう?
なんだか言いづらそうだけど。
まぁ彼の性格からして、改めてお礼を言うという行為は難しいことなんだろう。
それをしようというのだから、やっぱり彼は変わったんだな。良い方に。
「あ…ありがとう。助けてくれて。」
「うん…?何のことか分からないけど…。」
「……薬を、飲ませてくれただろ。」
あぁ、あれか。
彼は俯いて、"悪かったね。"と付け加える。
さっきから全然目を見て話してくれてないけど、まぁ人間そんな急には変われない……
って
そこまでボケッと考えて、自分がしたことを思い出す。
そうだよ、薬を"飲ませた"んだよ…!
「あ……あれはっその、慌ててたというか…!そ、その…っ……ご、ごめんなさい…。」
恥ずかしい!恥ずかしすぎて今なら空も飛べるかもしれない。
あの時は必死だったから気にもとめなかったけど、今思うと私なんてことを…!
2人して目を泳がせたまま、妙な空気と沈黙が続く――気まずい…気まずすぎる…。
「あ、いたいた、ユーリス!…と、エマ…ごめん邪魔した、かな?」
「…エルザ。」
むしろ良いタイミングで来てくれて助かったよ。
「どうかしたの?」
「島の中を調べに行くんだけど、一緒に来てくれないか?何があるか分からないから、皆で行く方がいいだろうと思ってね。」
そういえば、この島には珍しい物がいっぱいあると商人さん達も言っていた。
荒廃を何とか逃れ、今だ豊かな自然の残るこの島のことは私も気になっていた。
「わかった。ちょっと準備してくるね!」
「あぁ、甲板で待ってるよ。」
そそくさと部屋を出て、一応女部屋として割り当てられた部屋に行く。
…といっても本当は準備なんてない。
あの場から抜け出す為に言った口実にすぎなかった。
今日は赤面記念日かな…。
泣いたり恥ずかしかったり、のぼせそう…。