Chapter.11 1/4
誰か助けにきてくれるとか
そんな冗談を言った途端、看守のグルグが倒れてしまった。
見ると頭に矢が刺さっている。
これはもしやと思っているうちに、通路の影からエルザが現れた。
「エルザ!」
「二人とも、無事か!?」
エルザが看守から鍵束を拾い、牢の扉を開けようと試みるがなかなか合う鍵が見つからない。
痺れを切らしたユーリスが「お願いだから、早く開けてよ」と急かした頃、なんとか合う鍵を見つけられたようだった。
エルザって手先は不器用なのかも…。
そんなに鍵の数は多くなかったのに。
「遅かったじゃないか……でも、ありがとう助けに来てくれて。」
「うん、エルザありがとう。」
「マナミアは別の牢屋に連れて行かれたよ。早く助けに行こう。」
マナミア、大丈夫かな…。
私達は何もなかったとはいえ、マナミアの方もただ牢に入れられただけとは限らない。
そんなことを考えていると、後ろからアルがきた。鍵を開けている間、入り口を警戒していてくれたようだ。
「あれ?アルもいるんだ。」
「なんでアルがいるの?」
「ル、ルリ城からこの船に逃げ込む時に、たまたまね。」
「ふぅん。まぁ無事でなにより。」
「アルは舞踏会に参加してたんでしょ?バルコニーにいるのが外から見えたよ。」
そういえばあの時はドレスだったのに、いつの間に着替えたんだろう…。
「え?あ、見られてたんだ。」
なぜかちょっと照れながら言うアルが可愛くて、これが俗に言う萌えというやつか…と1人で納得した。
「…エルザがサボってたのも見えたからね!」
ついでにエルザにも一喝しておいた。
サボってたわけじゃないよ!と弁解するエルザは無視しておこう。
少し進むと一部が浸水しており、その先に牢屋が見えた。
まさかここにマナミアが…?
船の大きさから考えて、この先にまだ牢屋があるとは考えにくかった。
「浸水してるな…泳ぐのは嫌だ。エルザに任せたよ。」
と、ユーリスも先がないことを見越してか、エルザ1人で行けと促していた。
私も泳ぐのは嫌なので、無言で視線を送っておいた。
エルザの顔が引きつったようにも見えたけれど、黙って水に入って行った彼はお人好しだと思う。
あとアルも黙って待っている辺り、強かだと思う…。
しばらくバシャバシャという水の音を聞きながら、エルザが戻ってくるのを待つ。
周りを見るとこの辺は倉庫のようになっていて、色々なものがたくさん積まれている。
そう掛からないうちに、エルザはマナミアを連れて戻ってきた。
「そうそう、私たち捕まってたんですよね。お二人もご無事で。」
うん、良かった。いつものマナミアだ。
「あ、ああ…なんか緊張感そがれるな。ほかの皆は?」
「クォークも一緒だったんだけど、途中ではぐれてしまったんだ。」
クォークも来てるんだ。
セイレン達は大丈夫なんだろうか。簡単にやられはしないと思うけれど…。
「早くクォークと合流した方がいいよ。いくら彼が強くても一人じゃ勝ち目ないし。」
「そうですわ、私すっかりオナカが空いてしまいましたもの。」
「…マナミア、さっきの仕事中からずっと空いてない?」
「えぇ。もうぺこぺこですわ。」
帰ったら酒場のマスター大変だろうな。あとクォークの財布。
その前にこの船の食料全部無くなっちゃうかも…。
そんなことを考えながら、近くの物置を物色する。
「エマ?何してるんだ?」
「んー、私武器落としちゃったから、何かないかと思って…っと。」
さすがに太刀はないようで、箱の中から短めの剣を取り出す。
とりあえずこれでいいか。
持ってきていたダガーと共に剣を腰に挿し直し振り向くと、ユーリスが不思議そうな顔をして今し方の剣を見ていた。
「エマ、それ扱えるの…?」
「うん?私、太刀の扱いを教えてもらう前は、短剣使ってたから。」
「ふぅん…。」
むしろ、こっちの方が動きやすいくらいだけど、何分ずっと太刀を使っていたので少し不安は残る。
でもセイレンの二刀を見たときから懐かしく思っていた。たまには二刀も悪くないかな。