Chapter.05,06 1/6
酒場の中は、外に負けず劣らず賑やかだ。花火が終わった今、むしろこちらの方が騒がしいかもしれない。
エルザとアルに続いて酒場に入ると、セイレンとジャッカルが迎えてくれた。2人はエルザが女性を連れて帰ったことにニヤニヤしているようだ。
「エルザ、わが弟よ。よくやった。」
「ったく…どいつもこいつもジャッカルの影響受けやがって。」
「何を言う。教育の賜物と言ってくれたまえ。」
「違うって…話を聞いてくれ。エマも何とか言ってやってよ。」
後ろでアルと共にそのやりとりを黙って見ていたら、エルザが急にこちらに話を振ってきた。
「ん?私はさっきそこで会っただけだよ。」
「エマ……。」
エルザは少しだけ泣きそうな顔をしていた。
そんな顔をされても、本当に2人のことについては何も知らないんだけど…。
入り口の前でしゃべっていては他のお客の迷惑になる。2階に場所を移しエルザは必死で二人の誤解を解いていた。
セイレン達が尚もからかうので、ちょっとだけ同情してしまう。私も衛兵に追われていた事実だけは話してあげた。
あ、そういえば…
「2人はどうして衛兵に追われていたの?」
「あぁ、あれは…」
「あの人達、お金も払わずに屋台のものを食べていたの!あんまり好き放題していたから、ちょっと注意したのよ。」
「…そうだったんだ。」
なかなか勇気のあるお嬢さんだった。
世間知らずなだけのような気もするけれど。
「さてと、んじゃあたしは風呂でも入ろうかな。」
2人がなんとか納得した後、セイレンがそんなことを言った。
どうやらこれで解散かな?
「エマちゃ〜ん、アルちゃ〜ん、一緒に入ろっか?一日走り回ったんじゃ、汗かいてるだろ?」
「あ……、はい!」
「ちょ、セイレン…」
エルザが割って入る。アルとセイレンを一緒にするのは不安なのか…。
「なーんだよ。あ…
エルザちゃんも一緒するかい?」
「え?あ、入る…あ、入っちゃう?あ、いや、いいです。いいです!」
エルザが混乱している。
まさか入るとか言うなんて…。ちょっと彼のイメージが変わってしまった。
「おっし、んじゃエマ、アル、行くぞ〜。」
「あ…わ、私は後で入るよ。」
アルは元気良く返事をしたが、私はそんな風には言えなかった。
恥ずかしいとかではなく。
会って1日でそこまで心を許せるほど、平和な世界で生きてきてはいないのだ。
アルの純粋さが、ちょっとだけ羨ましい。
「そうか?…じゃ、また後でな。」
「うん、ごゆっくり。」
セイレンは残念そうな顔をしたが、またすぐいつもの快活な笑顔で手を振ってくれた。
セイレンのこのあっさりした感じはとても好きだ。