彼氏依存少女
アリエルの酒場の2階で、ユーリスを見つけた。
壁に寄りかかり、何やら難しい顔をして考え込んでいるようだ。
階段の下から覗き込む私には気付かない。
そんな、ただ立って時折足を組みかえるだけの彼を見て『かっこいいなぁ…』と思ってしまう私は、もう随分彼に依存しているようだ。
見惚れてぼーっとしていた自分に気付き、首を振って恥ずかしさを振り払う。
酒場の1階には人がたくさんいるんだった…!
ふと、思い付く。
あんなにかっこいい彼に、いたずらしたくなってしまった。
「…エルザ〜、ちょっといいかな?」
「え?アニス?どうかしたの?」
「ふふ、あのね、ボウガンを貸して欲しいの。」
「…え?…何に使うの?」
エルザに計画の一部始終を話す。
とはいえ、そんな大したものではないのだけど。
でも、これで彼も共犯のはずだ!
階段の下から少し顔を覗かせ、ユーリスを盗み見る。
やっぱり気付かない。
何をそんなに考え込んでいるんだろ?と、気になりはしたが、これからのイベントが楽しみで仕方がなかったのでその疑問は頭の隅へ追い払った。
「…アニス、やっぱりやめた方がいいんじゃない?」
「え、今更言われても…エルザも見たいでしょ?」
「……否定はしないけど。」
なら、よし。
彼の足元に狙いを定める。
チャンスは1回だけなのだ。
足を組みかえる、その一瞬を待つ…。
…今だっ!
「……っ!うわっ!」
見事彼の足元にバナナの皮を打ち込み、あのかっこいいユーリスは盛大にずっこけた。
「…!!やった!」
思わずガッツポーズを決め、華麗に転けてくれた彼を見る。
めちゃくちゃ睨まれているけれど、それが逆に面白くて笑ってしまった。
「………アニス。」
…怒られる前に逃げよう。
これは時間を置かないと、メテオで丸焼きにされかねない気がする。
そんな、殺気にも似たオーラを纏うユーリスから逃れようと踵を返し階段を駆け降りる。
…はずだった。
アニスは1段も降りることなく、ユーリスに腕を捕まれてしまっていた。
「………アニス。」
「は、はひっ!」
「……おいで。」
こ、怖い…けど、さっきの華麗な転け方が頭から離れず、可笑しな笑顔が顔に張り付いてしまっている。
なんとか言い訳を聞いてもらわないと…!
「あ、あのね、ユーリス、これはエルザがね…?」
「・・・・・・・・。」
お、おぉ、これは終わった。
短い生涯でした。
ていうかエルザ、逃げるの早すぎじゃない?
ユーリスが転んだ瞬間には後ろにいたのに。何の為の共犯者だと…。
ぐるぐると頭をフル回転させ、回転させすぎて段々混乱してきた頃。
気付けばユーリス達の部屋に来ていた。
「………アニス。」
「あ、ご、ごめんなさい!ちょっとした悪戯だったの!そんなに怒るとは、思わなくて…。」
「…そんなのわかってるよ。でも、
やられっぱなしは気に入らないからね。」
あぁ、彼はこんなに悪い笑顔もするのか。
また一つ新しい彼を知れてラッキーだなぁ…
などと惚けていると、がっちり抱き締められて耳を噛まれた。
「…ひゃぅ!?」
「…なんか、もう、吹っ切れた。アニス、覚悟しなよ?」
耳元で聞こえた低い声に、ただただ頷くしか出来なかった。
こんな危機的状況で胸が高鳴るなんて、やっぱり私は依存どころか中毒のようだ。
「…なぁエルザ。お前分かってて加担したんだろ?」
「…ジャッカル。だってあの二人、仲良すぎじゃないか。ケンカの一つでもすれば、進展があるんじゃないかと思って。」
「ま、それはそうだけどな。…しかし後が怖いぞー?」
「…覚悟の上さ。」
エルザはイケメン(^p^)
しかしバカップルはケンカせずにイチャついてました。ユーリスはどうしたらアニスと次のステップに進めるかで悩んでいたらいい。