繋いだ手のひら

ルリの街の職人通りで、前方に銀髪を揺らす少年を発見した。
傭兵の彼はもはや私の相棒だ。図書室で子供達に魔法学を教えていた時に、彼がフォローしてくれたのがきっかけで、今では彼も立派な先生だ。…いつ来るのか分からないのがちょっと頼りないんだけど。傭兵辞めるならスカウトしようかなと密かに思ってる。

おっと、見失う前に捕まえよ。


「おーい、ユーリスくーん!」

「アニス…!?」

「奇遇ねぇ。図書室意外で初めて見たわ。ユーリスくんお買い物?」

「…そのくん付けやめて。違和感ありすぎ。」

「外だから気を使ったのに。」

「余計な気遣いだ…。」


ユーリスはがくりとうなだれてため息を一つついた。憂いを帯びた美少年だ、相変わらず何してもカッコイイ。


「アニス、今日は非番?」

「ん、まぁね。遠征の準備は他の騎士がするし、今日は授業もないし…暇を持て余してるわ!」

「威張って言うことじゃないだろ。」

「ふふ。ユーリスは何してるの?」

「…暇を持て余してるんだよ。」

「あはは!お互い様じゃない!あぁ、じゃあちょっと買い物に付き合ってよ。」

「別にいいけど…何を買うの?」

「明日の授業で使う道具をね。実習しようと思ってるの。」

「へぇ、実習か…。」

「まぁ戦争始まったらさすがに私も忙しくなるし、自習ばっかりになる前に1回くらいはね。」


私がそういうと、ユーリスはきょとんという効果音でも付きそうなほどにぴたりと動きを止めた。えっ、そこ驚くところ?


「どうかした?」

「いや…そういえばアニスも騎士だったなって…。」

「今更…。」

「なんか、先生のイメージだったからさ。」

「あぁ、なるほど。」


彼は私が図書室で授業をしている姿しか知らないのだから、そう思ってしまうのも当然だわ。
ま、どうせ戦争が始まったら嫌でも戦場で会うでしょう。


「ま、行こうか。…あー、デートなんていつ振りかなー。」

「でっ…!?」


うん、相変わらずの反応で嬉しいわ。









「…これで全部?」

「ん、そうね。ありがと、やっぱり人手があると早いわね。」
職人通りにある店で、必要なものは全部揃った。それなりの量があって荷物になるし、今日はもう帰ったほうが良さそうだ。


「残念だけど、荷物増えちゃったし私もう帰るね。ありがとうユーリス。」

「アニス…。」


ユーリスはまたため息をついた。


「最後まで付き合うよ。それも貸して。」

「…ありがと。でも、荷物全部持つ必要はないのよ?」


申し出はありがたいし嬉しかったけれど、年下の男の子を荷物持ちにする趣味はない。
まぁ、せっかくなのでお言葉に甘えて半分は城まで持ってきてもらうことにしよう。


二人で並んで城を目指して歩いた。
ユーリスはしゃべるようで意外と無口だ。私が口を閉じると自ずと静かになってしまう。嫌いじゃないし、むしろ落ち着くんだけど…あ、そういえば私こういうシチュエーションでやってみたいことがあったのよねぇ。
さすがに嫌がるかなーと思いつつ、ユーリスの空いた手を取ってみた。


「…っアニス?」

「ふふ、私こういうのちょっと憧れてたの。」


荷物を半分こして空いた手を繋ぐってやつ。ユーリスは分かりやすいくらい全身でびっくりしていたけれど、すぐにぎゅっと握り返してきたのには不覚にもちょっとドキッとしてしまった。
あぁ、でも繋いだ手から緊張が伝わってくる。ふと見上げたユーリスの顔が赤いのは、今日の頑張りに免じて夕日のせいということにしておいてあげよう。


「ユーリス。」

「何?」

「またデートしようね。」

「っ!?」


うろたえる様子に笑っていると、彼は「あー、くそっ…」なんて呻いていた。
相変わらず可愛いなぁ。
傍から見たら恋人同士に見えるのかしら。それはそれで悪くないかも。
戦争が終わったら、ちゃんとデートに誘ってみようかな。







死亡フラグっぽいけど違います。原作沿いつつまだ続きます^p^


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