図書室の傭兵さん
最近、図書室によく傭兵が来るようになった。
なんでもアルガナン伯爵本人が雇ったそうだ。
確かに格好は傭兵のそれだが、彼からは他の傭兵のような荒れた雰囲気を感じない。
…というのも、今も私の目の前で子供達に魔道概論を教えているのだ。
子供達も彼にとても懐いているようで、『大きくなったら、ゆーりすお兄ちゃんのお嫁さんになる!』などと言われているのをこの前目撃してしまった。
あの時の、まんざらでもなさそうに笑う彼の顔が忘れられない。
…もしかして、ロリコンなのかしら?
子供達の前と他の場所で見かけた時の雰囲気が若干違うような…。
「………ねぇ」
「…へ?あ、はい?」
「さっきから何…?僕になにか用?」
「…あ」
どうやら考えながら彼を見つめ続けていたようで不審に思われたらしい。
「ご、ごめんなさい、なんでもないの。」
「…そう」
我ながらまさに不審者だったと思う。恥ずかしい。
というか初めての会話がこれとは…!
しばらくさっきの醜態に悶々としていると、子供達の声が聞こえなくなっていた。
帰ってしまったらしい。
もう夕方だもんね、そりゃそうだ。
彼もそろそろ帰るのかな?と思って見てみると、ばっちり目が合ってしまった。
あぁ、こっちに来る…。
「…きみ、いつもここにいるよね。」
「え?…あ、私これでもこの城の魔道士なので…図書の管理も仕事というか…」
「へぇ、魔道士か…。見えないね。」
「…よく言われる。あなたも傭兵には見えないよ。」
「そう?どうでもいいけど。…きみ、名前は?」
「…アニス。あなたはユーリスさん、ですよね?」
「ユーリスでいいよ、アニス。」
よかった、今度はちゃんと話せたようだ。
さっきみたいに白い目で見られてはいない。
「じゃ、僕は帰るけど、アニスは明日もいるの?」
「私は基本的には毎日いるよ。それが仕事だし。」
「ふぅん。そっか…。
じゃ、また明日ね。」
「…っ!?」
なぜかおでこにちゅーされてしまった。
「…ま、また明日。」
そう言って、図書室から立ち去るユーリスを見送った後、熱を持ち始めた頬を必死に抑える羽目になった。
…ちょっと期待してもいいのかな?なんて思わずにやけてしまう。
明日は何を話そうかな?
しかしルリ魔道士はアサシンクリードの人にしか見えないのであった。