「わぁ、これすごく綺麗!」
「そうね、ルナによく似合いそう」

ここはとある美術館。ワイズ・ゲルテナ展が開催されるということで、ギャリーに誘われるままについてきてみた。……いや、それじゃあちょっと語弊があるか。ちょうど私もゲルテナの作品、中でもアクセサリーには多大なる興味があったので、ひとりでも行ってしまいそうだったギャリーにむしろ一緒に行きたい!と私から志願したのが本当のところなのです。
ガラスの向こうに並べられた綺麗なアクセサリーたちにきらきらと目を輝かせる私に呆れもせずに付き合ってくれるギャリーは優しい。もちろん適当な相槌を打つだけなんて冷たいことはなくて、一緒になって楽しんでくれる人がいるのは幸せだなぁ、と思う。

「ん、満足」

でもまあ、いつまでもアクセサリーにかじり付いている訳にもいかないよね。私が頷いたのを合図にアクセサリーとはお別れして、2人でゆっくりと館内を観て回る。すごいねー。これはこんな意味かなぁ?時には言葉がないこともあるけれど、それでもすごく楽しいひととき。



「……、あれ?」

2階に上がって少し経った頃だろうか。さっきまで隣にいたはずのギャリーがいなくなっていることに気づいた。おかしいなぁ、黙っていなくなるような人じゃないのに。ぐるぐると館内を探し回ってみても見つからなくて、結局は彼を見失ってしまった辺りで大人しく待っておくことにした。『吊るされた男』。一体ゲルテナは何を思ってこんな絵を描いたのだろう。

もしかして先に帰っちゃったのかなぁ。そう思うぐらいには時間が過ぎた。私がうろうろしてる内にきっと入れ違いになったんだろうと結論づけて、下に続く階段に向かおうとした次の瞬間。

「……ギャリー?」

どこか様子のおかしい紫色を見つける。落ち着き無くきょろきょろと周囲を見回しているギャリーにそっと声を掛けると彼は勢いよくこっちを向いて、それから、

「ルナ……っ、良かった……!」
「わっ!?」

気が付いたら抱き締められていた。突然だからびっくりしたし、周りの人も驚いたように私たちを見ていて少し恥ずかしい。でも、小さく震える身体を突き放すことなんてできなくて、よしよしと頭を撫でてみる。

「どうしたの?」
「……アタシにもわからないの。別に何かがあった訳じゃないのに、なんだかすごく心細くて」
「うん」
「ルナの声が聞こえた時、とっても安心したわ。ちゃんとここにいるんだって、存在を確かめたくなって……アタシ、やっぱりおかしいわよね」
「ううん、そんなことない。大丈夫だよ、私はちゃんとここにいるから」

撫でるのをやめて、ギャリーの背中に腕を回す。私の存在を示すように、強く強く抱き締めた。

「……もう少しだけ、このままでいても良いかしら?」
「もちろん。ギャリーの気が済むまでぎゅってしてて」

どくん、どくん。身長差のせいでギャリーの胸に顔を埋めている私には、彼の鼓動が良く聞こえる。命を刻む音。生きてここにいることを教えてくれる音。私の音も彼に届いているならいいのに。










いのちのおと



20120526


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