特命任務
「大吾さん、昨日はお疲れ様でした。」
「あぁ、久しぶりに楽しい飲み会だったな。」
「そうですね。あの、昨日はあの後どうされましたか?」
「あの後か?普通に帰って寝たよ。」
「えっ…。」
「どうした、なんかおかしかったか?」
「いえ…。」
「そういえば、一緒についてきた女が峯のことを気に入っていたみたいだから連絡先を教えておいたけど、良かったか?」
「…ありがとうございます。」
「峯、良かったな。可愛くて良い子だったぞ。」
「…はい。じゃあ、私はこれで、失礼します。」
静かに扉を閉めて男は深いため息を吐く。折角の機会だったのに、まさかこんな結果になるとは。しかし、結果報告はしなければいけない。気は進まないが、携帯を取り出して事後報告を。
「どうだった?」
「昨日も無理でした。また次回、うまくいくように段取りします。」
「峯、あなたにこの件は一任してるからね。ちゃんとうまくやるんだよ。」
「はい、姐さん。」
電話を切って今回はあまり怒られることがなくてほっとする。大吾さんの母親である姐さんから受けた依頼。大吾さんに女性を紹介して何とかして欲しいとのことだった。聞いた時はすんなり事が運びそうだと当初は軽く考えていた。しかし、現実はいつもこんな風になってしまう。お人好しにも程がある。本当に大吾さんという人は。
次回こそは必ず大吾さんにうまくお持ち帰りしてもらおう。
男は深い決意を決めて歩き出した。
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