「じゃあ、俺達は先に帰るから戸締まりしっかりしておいてくれよ。」
「うん…。」
渋滞を避けて帰りたいのでもう少しゆっくりしてから帰ろうとなった私と真島さん。そして兄夫婦達は子供もいるので早く帰ると言うことで静かな空間にまったりとした時間。ようやく2人の時間が戻ったことでほっとする私。真島さんはのんびりと縁側で寝転がっている。どうやら真島さんも疲れたのだろう。今はきっちりと結んでいたネクタイが緩められている。
「お疲れ様でした。」
「なかなか、楽しかったで。」
ご飯を食べた後は甥っ子達と楽しそうに遊んでいた真島さん。お姉さんはその姿を見ながら早く椿チャンも一緒になった方がいいのかもねと一言。うん、やっぱりそうなりますよねと思いながら以前よりは随分と未来に関して前向きに考えている。
「2人共、仲良くやれよ。」
兄に去り際に言われた一言も大きいのだろう。
お盆に入れたアイスコーヒーが入ったグラスを2つ置いて私も縁側に腰かける。なんかこんなにのんびりしたのは久し振りかもしれない。そう思いながら真島さんは煙草に火を。そう言えば今日は一度も吸っていなかったようだ。やっぱり緊張と遠慮があったのだろう。
「灰皿ここに置いておきますからね。」
真島さんの横に置いて私はアイスコーヒーを一口。昼間は蝉が忙しなく鳴いていたが今はトンボが悠遊と目の前を飛んでいる。もう季節は変わろうとしているのだろう。
「何、やってるんですか!」
そんな風に季節を噛み締めていると膝に重みを感じる。真島さんは頭を置いてええやろと言っている。
「お姉さんも中々綺麗やったけど、やっぱり椿が一番綺麗や。」
「…………。」
答えられずに私の顔は赤くなる。やっぱり真島さんは気づいていて一番私の欲しい言葉をくれる。真島さんの瞼が閉じられるのをそっと見て額に口づけを落す。真島さんの口元が孤を描くのを見て嫌な予感を感じたが、これは今日のご褒美ということにしておこう。
「真島さん、じゃあ、出発しますからね。」
随分予定よりものんびりしてしまったので辺りはかなり暗い。まぁ、渋滞は回避できそうだ。真島さんはその横で私のナビに何かを入れている。
「どこに行こうとしてるんですか!」
「そりゃ、愛を深める場所に決まっとるやろ。」
イヒヒと笑いながらオーナーさんの仕事の一環にも貢献せんとなぁとうまく言い包められている私。どうせ私が明日休みなのも知っているのだろう。抜かりない人だ。それでも私はこの人が好きでナビに示された通りにハンドルを動かすのみ。
縁側で夕涼み
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