当たるも八卦当たらぬも八卦
男は自分の感覚だけを信じて生きてきた。
それが間違いではなかったし、今までどんな危険なことがあったとしても何とかギリギリで生きてこれた。
だからこそこの他力本願のような占いというものが男は嫌いだった。
「親父、おうし座ですよね?」
「なんや、西田。そんなん知らんわ。」
そう言いながら目の前の画面には今日はおうし座が1位です!の文字。
そしてそこには今日一日が最高の日です!とのこと。
しょうもないなぁと思いながら煙草に火を点けながら思う。
自分自身の今の生活に不満はない。
自分を慕ってくれる部下、何不自由ない金、力。
欲しいものならなんでも入る。
しかし何かが足りない。
それが何かは自分でもわからない。
でも時にふとそう思う。
「親父、今日桐生の叔父貴、神室町に来るみたいですよ。」
「なんやて!早よ言わんかい!」
お、これが1位の効果かと思いながらどうやって桐生チャンと喧嘩しよかと考え始めた。
◆◇◆
何が今日1日最高の日やねん!
そう思いながら神室町を歩く。
慣れないヒールで足はすでに悲鳴をあげている。
ようこんなん女は履きよると思いながらも消化不良の気持ちがどんどんと湧いてくる。
西田に言われて桐生チャンがいると思ったのに行けば似ても似つかない男が。
なんや、こいつと思いながらも絡んできた為、叩きのめすが雑魚すぎて相手にもならない。
すると胸元の携帯が鳴る。
「親父、そのカツラ借りもんなんで返してきてもらいたいんですけど。」
「はぁ?」
後で着替えは持っていくんでと言われ来たのは以前ゴロ美をするのに手伝ってもらった亜天使。なかなかおもしろいママさんで昔はヤンチャをしてたようだ。
「あら、ゴロ美ちゃん久し振り。」
「ママさん、借りてたもん返しにきたで。」
あら、今日じゃなくてもいいのにと言われ、カウンターにどうぞと言われる。
むしゃくしゃした気持ちはとりあえず酒を飲んで落ち着けることにしよう。
そう思いながらカウンターに向かうと、女が1人。
少し不思議そうなものを見るような目でこちらを見てからにこりと笑い、手招ている。
なんや、この女。
「はい、じゃあ、ゴロ美ちゃんもどうぞ。」
渡された酒を受け取り、グラスはかちんと音が鳴る。
見てみると相当酔っているのか目はとろんとしていて頬は赤い。
「ほら、椿、あんまりゴロ美ちゃんに絡まないの。」
はいはいーと椿と言われた女はゴロ美ちゃん、いい体してるねと肩を叩きながら話かけてくる。
最初は適当に相槌を打っていたが、徐々にお酒が入ってきているのか気分が上がってきた。
それは女が持つ独特の空気なのか何なのかは分からない。
時に笑い、時に怒り、時に泣く。
ころころと変わる表情に驚きながらも不思議と面倒だとは思わなかった。
「ゴロ美ちゃん、着替え持ってきてもらったわよ。」
奥に着替える場所があるから化粧も落としていけばと言われ、ほんなら、借りるでママさんと言って席を離れる。
えぇー、ゴロ美ちゃん、もっと話そうよ!と言っている女の腕を引きはがす。
ほんまになんや、あの女。
着なれた服に袖を通しながら女の事を考える。
今までに自分の出逢ってきた女とは全く違う人種。
おそらくカタギではあると思うが、自分の胸元にいれている刺青にも気を留めず物怖じせずに話しかけてくる。
自分が普段見ている女とは違う。金を持っていると思い媚びてくるような女でもなくヤクザと知って嫌悪の目でみるような女とも。
そんな事を考えながら戻ると店はすでに閉店しようとしている。
そしてカウンターに突っ伏している女。
ほんま、どうしようもない女やのぅ。
そう思いながらも困っているママさんを見て、自分が連れて帰ることに。
…と言っても名前しかわからない。
ママさんからはほっとけば、誰か適当にそのへんの男に拾ってもらうから大丈夫。と言っていたが、そんな言葉を聞いてなぜだが胸がざわつく。
なんちゅう、軽い女や。
そう思いながらも起きる様子もない女をどうしようかと考える。
事務所に置いといてもいいが、血の気の多い自分の部下がいることを思うとなんとなく気分のいいものでもない。かといって自分の家に置くのもどうかと思う。
そして目についたのはラブホテル。
まぁ、置いて帰ったらええか。
すでに少し腕が痺れてきたのを感じながらホテルへと入る。
ベッドに降ろし、無防備な状態で寝息を立てる女。
先ほどのママさんの言葉を思い出し、そうなってもおかしないんやろなぁと少し笑えてきた。ほんなら、帰るかと思いながら今日の1日結局何もいいことがなかったじゃないかと思い出す。
「なんや!気持ち悪いんか?」
急に起き上がった女は腕を掴む。
酔いが醒めたのかどうかは分からない。
でも自分のことをまっすぐと見る黒い瞳。
なぜだが、目は反らせなかった。
そして、
「ねぇ、抱いてよ。」
首に腕が巻かれ、耳元でそっと囁かれる声。
「…………。」
いつもならこんな事で堕ちる自分ではなかった。
でもその日はなぜだが違った。
昂る気持ちは抑えきれず、そのまま女の言われるがままに押し倒す。
女は満足そうに唇を奪う。
なんや、この女。
またしても自分はこの女の新たな顔を知る。
感想から述べるとなんや、この女ごっついという一言では片付けられなかった。勢いに任せて何度か抱いた後に女は疲れ果てて今は横で静かに寝息を立てている。自分は少しの気だるさを感じながらも煙草に火を点けながら若い時ではないのになんでこんなにがっついてしまったのかと思う。
おもろい女やのぅ。
そう思いながら、自分の中で沸々と上がる気持ちとこの女の事をもっと知ってみたいという好奇心がでてきた。
「それが、本当にあの日の話なんですか?」
「せやで、ゴロちゃんは嘘は言わんで。」
「絶対、嘘!」
あの日、本当は何もなかったんじゃないかという彼女に真実を告げてみると案の定、憶えていなかったようだ。
「あの日の椿、ほんまごっついエロかったなぁ。またしてくれへんかのぅ。」
「しませんから!」
そう言いながら怒っている彼女の顔を見ているとやはりあの日の占いは当たっていたのかもしれないと男は思う。
出逢うはずのない2人が運命的に出会う。
占いも信じてみるもんやのぅ。そう思いながら目の前の彼女をそっと抱きしめた。
青天井様。
いつも色々コメント頂きありがとうございます!
こんな感じでFake Itの序盤があった訳ですがいかがでしょうか?
夢主ちゃんは結構がっつりなビッチちゃんだった感じが出せたので個人的には良かったかなと思ってます(*´з`)
引き続きまた色々と更新していきますのでお楽しみいただければと。
リクエスト頂きありがとうございました!
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