ノンフィクション

鍵が閉まる音を聞き、私はダクトをそっと開けて部屋へと侵入。
そしていつものように部屋を見渡しながらカメラでひとつひとつ丁寧に撮影をする。
用意していた小さめのバッグから必要なものを取りだす。

まずは手袋、コロコロ、チャック付きの小さめの袋、ピンセット。
手袋をつけて準備は完成。

ソファーに隠していた録音データーを回収し、新しいデーターを差し込む。
後でゆっくりと聞こうと微笑む。
寝室に向かうと乱雑に置かれたシャツをとり、鼻に押し当てると彼の匂いがする。
幸せな気持ちが広がる。
キッチンに向かうと乱雑に置かれた飲みかけのコップ、ビールの缶などが置かれている。
私は少し鼻歌を口ずさみながら丁寧にコップを掴む。
そしてそっと自分の口を押し付ける。

私と彼の甘い時間が今日も始まる。
そこは誰にも冒すことはできない。

溜まっている吸い殻を数本拝借し、袋に入れる。
日付を記入し、完了。

取り出したデーターを差し込み、イヤホンをつけて流すと耳からは私の大好きな関西弁が広がる。幸せに浸りながらその場に倒れ込み彼が着ていたであろうジャケットを抱きしめながらそっと目を閉じてその声に耳を傾ける。

ふと目を開ける。
気づけば寝ていたようだった。
変わらず部屋はしんとして今日の予定ではまだ時間はあるはずだ。

再開する。

ジャケットをかけてある部屋に向かいひとつひとつ丁寧にコロコロをかける。
そして、私の眉がぴくりと動く。
彼の髪は綺麗な黒色だ。

でも所々に長い茶色のものや金色のものも混じっている。
私は注意深く彼の髪は用意していた保存袋にいれ、彼のものではない髪の毛をまじまじと見つめる。腹立たしい気持ちを抑えて髪の毛を掴み、洗面所へ。
そしてライターで火をつけて燃やす。
じっと焦げた音がして思わず勢いよく火がついてしまったことで慌てて水を流す。
少しだけ焦った。

私は何をやっているんだろうと思いながらも荒らしてしまった部屋の写真を確認しながら元通りに。

そして今日もこの時間が終わる。

あれ、こんなの前からあったかな。
TVボードに置かれている置物が気になったが、私はダクトへと戻る。











「親父、ええんですか?このままで。」

「ええんや。まだまだやのぅ、椿。もっと俺を楽しませてくれや。そしてもっと墜ちてしまえばええんや。」

男は笑いながらモニターを食い入るように見ている。
別の部屋、そのモニターからは私の様子が流れている。
私はそんな事を知らずに毎日この生活を送っている。

深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。

2人が交わる日は来るのか。
それは2人だけの秘密。




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