21


 六月、盛岡。金田太一。八月、横浜。島田治。九月、名古屋。大和広。伏黒君が電子タブレットをスライドさせながらそれぞれの被害者の名を挙げていく。本日の任務の補助監督を務める新田さんがハンドルを握りながら解説を続けた。

「三人共同じ状況で死んでるんスよ。自宅のマンションのエントランスで呪霊による刺殺。しかも全員死ぬ数週間前から同じ苦情を管理会社にチクってる」
「苦情って?」
「オートロックのドアが開きっぱなしだって。他の住人に心当たりはなかったっス」
「でも日付も場所もバラバラ。同じ呪霊にやられたんですか?」

 後部座席に座る三人で画面を覗いた後、伏黒君が助手席に座る私の為に「ほら」と後ろからタブレットを見せてくる。確かにそこには被害者の写真と共に、バラバラの死亡時期と場所が記載されていた。これだけ見ると共通点はなさそうだが、高専で調べた結果三人共同じ中学に二年間在籍していたことが判明した。
 虎杖君がふと「呪霊ってセンサーとか引っ掛かんの?」と疑問を投げかけた。オートロックが開きっぱなしという苦情が呪霊のせいならそういうことなのかなと私も思っていたが、どうやら新田さんによるとドアセンサーではなくドアオペレーターの方に呪霊の影響が及んだらしい。そして、同じ呪霊の仕業かどうかは残穢だけでは断定できなかった。

「っていうと、昔三人が同じ呪いを受けて時が経ってそれが発動したって感じ?」
「そうっス。それ濃厚っス」
「おおっ、凄い野薔薇」
「すげー釘崎」
「フッ。当然」

 きらりと名推理をした野薔薇を虎杖君と一緒に褒め称えてたら間に挟まれた伏黒君が呆れた表情で背中をシートに預けた。もしかしなくても分かってなかったの私と虎杖君だけか。

「で、今からその中学と三人の被害者の共通の知人に話を聞くので四人にも術師視点で色々と探って欲しいっス」

 今回の任務の主な目的を提示され、大きく頷く。車は漸く高速道路を降りると、初めに三人の共通の知人が暮らす一軒家に向かった。
 住宅街を抜けて目的地の近くで路駐をする。しかし、何やら喪服を着た住民が参列しているのを見つけると、私達は慌てて車から降りた。

「葬式…」
「ここがその知人の家?」
「そう…なんスけどこれは…」

 家の前には森下家の葬式案内の看板が立て掛けられている。まさか、と嫌な予感に一同が顔を顰めた。

「…参ったっス。他の三人と同じ死に方っス」

 事情を聞きに行った新田さんは、暫くして戻ってくると頭を抱えて特大の溜息を吐いた。嫌な予感は的中し、やはりその共通の知人までもが殺されたことによる葬式だったのだ。
 実家暮らしの為オートロックではなかったものの、他の被害者同様玄関の前で死亡していたらしい。

「以前から一人で帰宅した際、鍵が開いているのにドアが開かないと他の家族に言ってたみたいっス。ご両親も三人との関係はよく知らないって…。あ〜唯一の手掛かりがぁ〜」
「ドンマイ!この中学に何かあるって!」

 項垂れる新田さんに虎杖君が励ましの言葉を掛け、早速次の目的地である中学校に向けて車を走らせる。手掛かりが消えていく中、その共通の中学でも何も得られなかったら任務の成果的にかなり痛いところだ。
 何か情報があればいいんだけど、と助手席の窓から流れていく景色を眺めていた私はふと、思い出したことを隣の新田さんに問いかけた。

「凄い今更なんですけど、今向かってる中学って何てとこですか?」
「ああ。浦見東中学校っスよ」
「え…?」

 思わず言葉を詰まらせた私に、新田さんが横目で私を見てから「どうかしたっスか?」と不思議そうに言った。慌ててなんでもないと取り繕えばそのまま小首を傾げて運転に集中したので、私も何事もなかったかのようにもう一度窓の外に顔を向ける。
――― 私は、その中学校に通っていた時期があった。
 昔から父親の転勤の都合で学校を変わることが多く、小学校から高校に上がるまでの間、主に関東を中心に引っ越しをしていたからさいたま県に移り住むこともあったのだが、まさかここでその学校の名を聞くことになるとは思わなかった。
 咄嗟に新田さんに誤魔化したのは何も疾しいことがあるからではない。転校を繰り返していた私はどの学校もほんの一年程しか在籍していなかったし、友達という友達もできたことがなかったから、手がかりを失くして落ち込む新田さんに余計な期待を与えたくなかったのだ。被害者達とは大分年代が離れているから言ったところで問題はないのだろうけど、何となくそれを伝えるのは憚られた。

 そうして考えに耽っていたらいつの間にか中学校に到着していた。来校者専用の駐車場に車を停め、早速責任者の元へ向かう為に車を降りる。
 色褪せた古い校舎は相変わらずだ。正直ここにはあまりいい思い出はなかったけれど、一種の懐かしさみたいなものを感じて辺りを見回していたら、野薔薇が面白いものでも見つけたのかニンマリと口角を上げた。
 皆してその視線の先を辿る。するとそこには、正に不良というべき中学生二人が影に隠れてタバコを吹かしていた。

「分かりやすいのがいるわね。ぶん殴って更生させましょ」
「いやなんで?」

 不良のテンプレのような姿に興味津々な野薔薇を虎杖君が嗜めていると、視線に気付いた生徒二人がガンを飛ばしてきた。しかし、すぐに顔を青くさせると、体を見事に九十度に折って「おっ、お疲れ様です!!」と怯えるように叫んだ。

「フッ。何よわかってるじゃない…」
「オーラってやつは隠しても滲み出るもんだからな」
「…どっちかっていうと二人に対してってより、」
「卒業ぶりですね伏黒さんッ!」

 「伏黒君じゃ…」という言葉は溌溂とした挨拶によって掻き消された。ぽかんとしながらすかさず振り返った野薔薇と虎杖君。私まで複雑な表情でちらりと隣を見れば、一同の視線を一身に受けた伏黒君が至極気まずそうに「俺、中学…ココ」と呟いた。

「それも驚きだけどそうじゃねぇだろ。こっち見ろ!」
「何した。お前中学校で何した」

 方々から顔面を押さえられ、伏黒君の顔が大変なことになっているが、それでも彼は一向に野薔薇達の方を向こうとしない。
 それに、私としてもこの事実に内心動揺が隠しきれない。この露骨な上下関係は勿論のこと、伏黒君が一瞬とはいえ私と同じ中学だったなんて初耳だ。そりゃ私も言ったことないし、事実在籍中に出会した記憶もないから向こうも知る由はないのだけれど。
 悶々としていれば、いつの間にか野薔薇と虎杖君が両目をつり上げて生徒二人に「バカAバカB。コイツに何された」と詰め寄っていた。これじゃあどっちがチンピラか分からない。野薔薇が言うところのバカAは、後ろ髪を掻きながら苦笑いを浮かべる。

「俺ら…ていうかこの辺の不良、半グレ、その他諸々伏黒さんにボコられてますから…」
「……」

 さっと目を逸らした伏黒君が、ついに冷ややかな眼差しに耐えかねて「ボコっ…た」と小さく呟いた。

「なんでさっきからカタコトなんだよ。こっち見ろって」
「何してんの?お前何してんの?」
「あの、もし違ってたらすんません。もしかして名字先輩っスか?」

 今まで様子を伺っていたバカBの唐突な発言に野薔薇達が手を止め、その場が静まり返った。え、何で私?全然ボコった記憶とかないんですけど。
 必死に動揺を隠しながら「な、何で知ってるの?」と辛うじて口を動かせば、生徒二人は顔を見合わせるなり「うぉお!やっぱり!」と何故か興奮気味に叫んだ。野薔薇と虎杖君の「お前も隠し事か」という視線が突き刺さって痛い。

「俺らが一年の頃、転校してきた二年生が美人だって専ら話題になってたよな!」
「そうそう!浦見東中のマドンナとか呼ばれて!偶々見た顔が似てたし、伏黒さんもいるからもしかしたらと思ったんスけど、まさかまた近くで見れるとはなぁ。あ、でもあの噂が…」
「ちょっっっと待てッ」
「いーや待つのはアンタよ!」

 ペラペラと懐かしそうに語る二人に冷や汗を流しながらストップを掛ければ、鬼の形相をした野薔薇と虎杖君に思い切り顔を挟まれた。

「何。名無しまで中学ここなの?しかも浦見東中のマドンナってどんな芋臭いマドンナよ!」
「芋臭くて結構ッ!私はそんな話全ッ然知りません!!」
「じゃあ何か!?お前ら高専前から知り合いってこと!?」
「…いや。名字は三年なる前に東京帰ってたし…」
「一応知ってんじゃねーかッ!」

 え?そうなの?
 胸倉を掴んでぶんぶん振り回されて私までパニック状態だ。すると騒ぎを聞き付けたのか、校務員らしきお爺さんが怒鳴りながら走ってきた。

「コラッ!何だ君達は!他校の生徒が入っちゃいかん!」
「アンタこそ何よ!」
「いや、校務員さんだろ。何で強気なの?」

 今までやりとりを我関せずと見ていた新田さんがすかさず入稿許可証を提示すると、事前に話は通っていたのか「ああ、君達か」とすぐに入校を了承してくれた。
 校務員さんは私達の年齢に驚きながらぐるりと見回すと、伏黒君を捉えた瞬間目を丸くした。

「伏黒君か!」
「…ども」

 気恥ずかしそうに挨拶をする伏黒君の後ろで、揶揄いコンビがニヤニヤしながら茶化す。

「この人は学校長いんスか」
「多分…。武田さんは正規の方なんで」
「じゃ、後任せたっス!」

 ぐっと親指を立てた新田さん。職務放棄では?と一瞬思うも、お互い知り合っている方が事情も上手く説明できるだろうしと深く突っ込まないことにした。
 被害者である金田、島田、大和、それに森下の事件について切り出せば、武田さんは「卒業してもう二十年か…」とどこか懐かしそうに、悲しそうに目を伏せる。

「昨日のことのように覚えているよ。伏黒君程ではないが問題児だったからね。何が聞きたい?」
「変な噂。黒い噂。悪い大人との付き合い…」
「や〜い問題児〜」
「あと罰当たりな話とかあれば」

 執拗に揶揄う二人は今度こそ伏黒君に殴られていた(虎杖君だけ)。
 武田さんは顎に手を当てて考え込むと、何か思い当たることがあるのか、唸りながら逡巡している。すると傍観していた生徒二人が「あれじゃないですか?八十八橋のバンジー」と人差し指を立てた。

「まだいたのかAとB」
「八十八橋って?」
「自殺の名所。この辺で有名な心霊スポットだ」
「おおっ、そうだ。八十八橋で深夜バンジージャンプをするのが不良少年の間で流行ったんだ。所謂度胸試しだね」
「どこの部族よ」
「俺よりバカって意外といるよな!」
「虎杖君ってさらっと辛辣だよね」
「紐どうすんだよ」

 真顔で次々に突っ込む三人に尻込みしながら「俺達はやんないっスよ」と生徒二人が否定する。度胸試しが流行ったのは今の代ではなく、彼等の親世代とのことだ。
 武田さんの話によると、ある日無断欠席をした四人の生徒の自宅に連絡すると前日から帰っておらず、結構な騒ぎになったことがあった。しかしすぐに橋の下で倒れているのが発見され、大説教になったものの、本人達は何も覚えていないの一点張りだったのだ。
 一同が顔を見合わせる。状況にしろ人数にしろ、被害者と一致している。当たりだ。

「八十八橋なら俺も行ったことあります」
「バンジーしに?い"ってぇ!」

 今度は結構強めに殴られているが自業自得だ。

「心霊スポットとかは学校とかと同じで呪いが溜まりやすい。だから高専関係者が定期的に巡回するんだ」
「そん時は何ともなかったですね。有名っちゃ有名ですけど普通に使われてる橋ですし」
「でも行ってみるしかないわよね」
「そうだね」

 行き先は決まった。早速向かう為に車に乗り込もうとすれば、武田さんが「伏黒君」と呼び止めたので一同が手を止めた。

「津美紀君は元気か?」
「……はい」

 なんだろう。伏黒君の声色が急に暗くなった気がする。本人は自覚しているのか不明だが、伏黒君は隠し事がある時決まって外方を向くのを私は最近になって知った。
 彼はあまり嘘が上手くない。けれども人の事情に首を突っ込む訳にはいかないので見なかったフリをすれば、代わりに虎杖君が「ツミキって誰?」と疑問を投げかけた。

「……姉貴」
「はぁ!?」
「伏黒君お姉さんいたんだ」
「アンタ自分の話しなさ過ぎじゃない!?関係ないみたいな顔してるけど名無し、アンタもだからね!」
「す、すみません…」

 ぷんぷんと怒りながら車に乗り込んでいく野薔薇に続いて虎杖君も「早く行こうぜー!」とドアを閉める。居た堪れない気持ちで振り返れば、丁度武田さんに挨拶をし終えた伏黒君が車に戻ってきていて、私の複雑に歪む表情を見るなりピタリと足を止めた。

「…その」
「……」
「任務終わったら、話すから」
「…分かった」

 私のこと知ってたの?とか、話すって何を?とか疑問は次々に浮かんでくるけど、今は私情よりも任務が最優先だ。
 問いただしたい気持ちをぐっと堪え、私はお見送りの為に微笑んで立っている武田さんに軽い会釈をしてから車に乗り込んだ。



***



 小鳥の囀りに合わせて虎杖君が大きな欠伸をする。深夜に八十八橋の見張りを開始してから何時間経過したのだろうか。辺りは薄らと明るみ始め、既に夜明けを迎えようとしていた。

「残穢も気配もまるで感じられませんでした」
「っスか…。となるとハズレ、振り出しっスかね」

 朝ご飯にとコンビニで買ったおにぎりを開封しながらガックリと項垂れる。条件からして確実だと思っていたのだが、そう上手くはいかないらしい。

「呪われてる人はまだいるかもしれないのに。早急に解決しないと」
「うん。しかも今んとこ致死率百パーセント。これ以上人死は勘弁だろ」
「確かにね…」
「流行ってたのはバンジーっスよね!飛び降りるって行為が鍵なんじゃないっスか!?」
「それはもう虎杖で試しました」

 淡々と述べる伏黒君に新田さんが「あのビニール紐で!?」と絶叫した。その反応は正常だ。只でさえ体格の良い男子校生なんて吊るしたらペラペラのビニール紐など千切れても可笑しくないので辞めた方がいいのではと止めたのだが、伏黒君と野薔薇が「虎杖はそんなもんじゃ死なない」という謎の根拠を押し通したので結果的に実行する事となった。虎杖君も怪我どころか満面の笑みで橋まで戻ってきたので、ある意味心霊スポットとして有名な八十八橋より不気味だ。
 バンジーもダメとなればもう手掛かりはないに等しい。どうしたものかと徹夜明けで回らない頭を回転させていると、遠くから伏黒君を呼ぶ声が聞こえてきて一同が振り返る。そこには昨日、浦見東中学校で八十八橋の事を教えてくれた伏黒君の後輩が自転車の後ろに女の子を乗せて此方に向かってくる姿があった。

「八十八橋って言ってたから!本っ当良かった!」
「藤沼?」
「誰?」
「同級生」
「姉ちゃんです」

 不良の弟とは対照的に物静かな女の子、藤沼さんがぺこりとお辞儀をする。どうやら伏黒君の同級生だったらしく、彼女は覚えられていたことにほっと安堵すると、私達の話を弟から聞いて思い当たる節があることを伝えにきてくれたのだという。「森下さんのお葬式と何か関係があるのかなって…」と不安気に俯く藤沼さんの後ろで、新田さんが人差し指を口元に当てた。呪いの話は厳禁ということなのだろう。

「関係ない。俺達ははただ…」
「私…行ってるの。中二の時、夜の八十八橋に」

 私達の間に緊張が走る。それはもしかしたら彼女も呪われているかもしれないということで、呪殺の発動条件と時期が分からない以上、藤沼さんの話を聞き流す訳にはいかない。彼女だけじゃない。当時八十八橋に訪れた人間は全員危険な状況下に置かれているのだ。
 一変した空気を悟られないように、新田さんはすぐに親しみのある笑顔を浮かべると「最近何かお家で変なことないっスか?」と遠回しに探りをいれた。すると藤沼さんはすぐに反応を示すと、みるみる内に表情を恐怖の色に染めていく。

「私の家は地方のアンテナショップやってるんですけど、私が帰る時だけお店の自動ドアが開きっぱなしなんです。お父さんもお母さんも偶々だって言うんですけど」
「……」
「絶対、何かいるんです。怖くて…そんな時に伏黒君の話を聞いて、八十八橋のことを思い出して」

 ドアの話も他の被害者と一致している。呪いによる異常が発覚してから被害者達が亡くなるまで最低でも二週間は空いていることが分かっているが、既に一刻を争う事態だ。
 新田さんがあくまで明るく接するも、誰と行ったか。いつ頃からなのか。事細かに当時の状況を尋ねる様子に藤沼さんの顔が次第に張り詰めたものになっていく。任務を遂行するに当たって、非術師を怖がらせるのは得策ではない。その点ではやはり補助監督である新田さんは手馴れたもので、大学のレポートの為に心霊スポットを調べているから問題ない。と満面の笑みで言い切った。勿論真っ赤な嘘ではあるが、安心してもらうことで情報の提供はスムーズに進む。けれど嘘を吐くからには、絶対に助けなければならない。
 藤沼さんは安堵の息を吐くと、懐かしいものを思い出すように小さく笑みを浮かべた。

「肝試しに行ったのは部活の先輩二人。そうだ伏黒君。あの時津美紀さんも一緒にいたよ」

 その言葉に、伏黒君の表情が凍り付いた。津美紀さんは伏黒君のお姉さんだった筈だ。困惑の視線を向ける私達に対し、伏黒君は何事もなかったかのようにいつもの表情に戻ると、「そうか。じゃあ津美紀にも聞いてみるわ」と藤沼兄弟に礼を言った。

 自転車で帰っていく二人を見送った後も、伏黒君はあからさまに動揺を見せていた。放心状態で立ち尽くす姿に虎杖君が肩を掴んで姉の安否確認を促すと、漸く我に返った後、「少し外す…」とスマホを取り出してふらふらと歩いていってしまった。
 聞こえてきた電話の内容から察するに、伏黒君が掛けたのは津美紀さんではなく伊地知さんのようだった。戻ってきた伏黒君に野薔薇達が何故と問い詰めるが、伏黒君は至って冷静に任務の危険性について話すと「お前らはもう帰れ」と無理矢理話の腰を折って車に押し込もうとしてくる。

「ちょっと待ってよ。危険だから帰るっていうなら伏黒君は?残る気満々じゃん」
「そうよ!」
「俺は武田さんに挨拶して帰る。ほら行け!」

 挨拶なら昨日したのでは。という言葉は強く肩を押されたことによって発することはできなかった。突き放すように背中を向ける伏黒君に虎杖君が心配そうに窓から視線を投げるが、走り出した車のせいでその後ろ姿はどんどん小さくなっていった。




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