俺と彼女と、その他一人。 | ナノ



「ふぉー、綺麗アル!」

軽やかなソプラノが8畳洋間の中心で感嘆の声を上げた。桃色の髪をたなびかせ、きょろきょろと辺りを見渡せばひらりひらり、と紺色のスカートが可愛らしく揺れ踊る。

「さすがトッシー!沖田の部屋とは大違いネ!」
「俺の部屋だってちゃんと片付いてまさァ。」

むっつり、と不機嫌そうに眉間を寄せる少年はじとり、黒髪のクラスメイトを睨む。

「お前の部屋は物がないだけアルよ。」

楽しそうに部屋の本棚を見上げる神楽は上機嫌だ。それに比べ、先程から沖田は不機嫌さをあらわにしている。




事の発端は三学期の終業式。午前中に式は終わり、いかにもやる気のない担任からの諸注意を聞き流していると、適当に畳まれた紙切れが隣の席から投げ込まれた。眠たいながらもどうしたのかと紙を広げてみると、そこには見慣れた丸文字で

"午後、ひまアルか?"

ちらり、と視線を向ければ、にやりとした悪戯っぽい笑みを浮かべる少女と目が合う。何となく、楽しくなった。

"ひま"

空いたスペースに返事を書いて隣へ投げる。と、すぐにまたコチラへと返ってきた。

"一緒にトッシーの家に行くネ"

はぁ!?

「おい、チャ「よし、帰って良いぞ〜」」

ガタガタと椅子と机が音を上げ、一斉にクラス中が騒ぎ出す。隣を見れば、そこには土方に話し掛ける彼女がいた。




思い返すだけでも腹立たしい。そもそも、どうしてマヨラーの所になど行くのだろうか。これといった接点などないはずなのに。

「飲み物とって来っから、あんま騒ぐなよ。」
「はーい、」

素直に返事をする少女に苛立ちが増す。何て心が狭いんだとは思っても、苛付くものは苛付くのだ。変わる気も直す気も、ありゃしない。

土方が部屋から出て行くと何やら神楽がベッドの下をあさり出す。

「何してんでィ…‥」
「んー、エロ本ないかと思って。」

床に伏せた体勢のせいで短いスカートから乳白色の太股が覗いている。もう少ししたら下着が見えてしまいそうだ。

「神楽、」

きょとん、とした彼女が振り返る。チャイナではなく神楽、ここ最近で名前で呼べるような関係になった。

「沖‥んっ、…‥ふ‥」

小さな躯をベッドに押し付け、荒々しく唇を貪る。掻き抱くように、隙間なく。呼吸さえも飲み込んでしまえ。

「はぁっ、はぁ、‥ぉき、たぁ…」

赤く染まる頬に接吻を。可愛い彼女は恥じらいに目を伏せる。下が土方のベッドなのは気に入らないがまぁ、今だけは知らないふりで。

「なぁ、神楽。ここでヤっちまうかィ?」
「ふ、ふざけんナ!!」











後書き、

突発的に浮かんだネタ。頭の中だともう少し長いお話だったんですが、きりが良いのでこの辺で。


ちなみに、部屋の外ではトッシーが冷や汗流しながら立っています。
入るべきか、辞めとくべきか、ど、どうする…‥、みたいな。


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