蒼と杏と、あの白と。 | ナノ 中学生モデルで双子で男の子な神楽ちゃんと神威くんと、高校生モデルの沖田くんがいる現代パロ。
※神←沖ですが、男の子←男の子なので苦手な方はバックを。
ほとんどBL要素はありませんが、注意してください。
「撮影、何時からだっけ?」
静かなボーイズソプラノがヘッドホン越しに聞こえた気がした。
「10時でィ、」
「ん、ありがと」
ぱらり、と雑誌のページがめくられる。少年の白く繊細な指先が紙上を撫ぜる。桜貝のような爪がいつ見ても印象的だった。
「兄貴は?」
「もうすぐ着くって」
無表情な横顔をじっと見詰めると、それに気付いた蒼い瞳がこちらを射ぬく。相変わらず、何処にも感情は見付からない。
「毎回ギリギリだねィ」
「‥…遅刻しなければ良いんじゃない?」
こてりと首を傾げる少年は、柔らかそうな杏色の髪を右耳に掛けた。そんな何気ない動作にもドキリとしてしまう自分に嫌気がさす。
馬鹿か俺。
男相手に何考えてんでさァ。
「おはよー
てか神楽、どうして先に行っちゃったのさ」
ドアの間から少年とよく似た顔の少年が頬を膨らませながら入って来た。神楽の双子の兄の神威だ。
「だって用意出来てたし、兄さん待ってると遅刻しかねないから」
「だからって、」
「あー、うん。ごめんネ?」
細い眉を下げて謝る少年は、なかなか確かに可愛らしい。兄貴も満更でもなさそうに淡く頬を染めるものだから、コイツにそんな顔させられるのはこの弟だけなのだろう、だなんて、どうでもいい事を考えた。
「撮影入りまーす」
「「はーい」」
立ち上がった少年は中学生らしい小柄な身長で、成長期はまだだった。スカートでも履かせれば少女としてイケるほど線が細い。
「人の弟を不埒な目で見ないでくれる?、沖田くん」
弟よりも暗い青い瞳で睨まれる。ブラコンめ、アンタの方がよっぽど不埒だ。
「ん〜‥沖田君、神楽と背中合わせてみて、‥……うんそうそう、笑って笑って〜」
カメラのシャッター音が断続的に響く。背中越しに伝わる熱が心拍を加速させる。
「あ、お兄さんも入って入って。神楽を後ろから抱きしめて、肩に顎のせて、‥あ良い良い!」
やけに密着度が高い二人を見ているとムカムカして面白くない。
「で、沖田君は神楽と手を繋いで、‥……よし、タイトルは“三角関係”!」
いやいやいやいや、駄目だろィィィ!!??男3人で内2人が兄弟の三角関係って……‥、ヤバすぎでさァ。てか、ここってそういう雑誌だっけ?え、そうなの?
「ほら、神楽。笑って笑って〜」
銀髪のカメラマンがレンズ越しに指示を出す。その通りに少年はふわりと笑う。
うわっ、‥かわいい。
「後で酢昆布やっからよ、」
銀髪の声に反応するように、より一層少年は淡く赤く染まる頬を緩ませた。
「ちょっと、神楽を餌で釣らないでよ」
「あーはいはい。神威も笑って、ほら沖田君も」
シャッター音が続く。ちらりと隣を見れば、よく似た、けれども違う双子の少年たちが笑っている。
ゆるりと大人びた笑みの兄とあどけなく可愛らしい弟は、ここ最近人気の中学生双子モデルである。テレビ出演、個人取材はNG。この銀髪のカメラマンが撮る写真にだけ出るという、にわかに話題の兄弟だ。
「はーい、お疲れ様で〜す」
撮影が終わるとすぐさま少年は銀髪へ駆け寄り、普段は無表情の蒼い瞳を桃色の期待に染めている。
「ほれよ、お疲れさん」
「ふぉお、ありがとアル!」
嬉しそうに酢昆布を抱きしめながら、これ以上ない程の笑顔を銀髪に向けた。
きらきら きらきら
空のように澄んだ蒼が眩しい。あの瞳に見詰められたら、きっと得も言われぬ悦びが自分を貫くのだろう。
銀髪が羨ましい。兄である神威もまた同様に。もしかしたらこれは完全に、
「いや、ないない」
「何言ってんの、ドS君」
「…‥‥何でもないでさァ」
神威が怪訝そうに目を細めた。
こんなこと言ったら、この兄貴に殺される。落ち着け俺。やっぱないだろィ、そんなの。俺がアイツに、
「有り得ないん、でィ」
この胸に渦巻く想いも、あの笑顔を見た時の悦びも、全部何を意味しているかなんて分かってるのだけど、嗚呼、どうすればいい?
「くそ、ッ‥…」
勘違いだと無視してしまえればいいのに。何を執着しているのだろう、こんな想いなんて、今ならまだ。
「「お疲れさまです」」
杏色の兄弟が去っていく。兄の手が労るように弟の頬を撫ぜて、それに答えるように神楽は微笑んだ。そんな少年を見ていたら、澄んだ蒼がこちらに向いた。
「あ、お疲れさまネ、総悟」
花のような笑みを前にしたら、性別なんてなんだっていい。だってもう、抗えないぐらいに惹かれているから。
君に花を、君に愛を。
蒼と杏と、あの白と。
この淡く甘い初恋を受け入れてしまえ。
【3周年お礼:その4】
神←沖、兄+銀、現代、片想い、その他(モデルパロ)、ほのぼの
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