▼ やさしいひとのやわらかな嘘
ロナート卿の反乱が鎮圧されてから、三日が過ぎた。
金鹿の学級に与えられた課題だったため、私たち青獅子の学級の面子はディミトリ様をはじめ、自国内のことだというのに、鎮圧には関わっていない――ただ、一人をのぞいて。
「アッシュ、それだけで足りるの? お昼からの訓練は厳しいから、もう少し食べたほう……」
向かいに座るアッシュの前には、スープ皿しか置かれていない。私よりも先に食堂に来て座っていたというのに、アッシュのスープ皿の中はちっとも減っていない。
「大丈夫だよ、ナマエ」
アッシュは小さく笑って、スープを口に運んだ。
「……そう、なら……いいの」
私はそう返して、自分のスープを匙で掬う素振りをした。
――ちっとも大丈夫なんかじゃないでしょう?
食事はおざなりだし、目の下には隈だってある。ため息をつくことが多くなったし、一人の時は眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。
大丈夫だなんて嘘、つかないで。
言えない言葉と一緒に、私は匙の中のスープを飲み込んだ。
2023/05/06
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