▼ 夜間ゆびさき不明
――約束。ずっと、そばにいてね。
……そう約束したのだ。
――いつ?
……もう、何年も前に。
目覚めは唐突に訪れた。
体を起こして部屋を見渡せば、室内はまだ夜の帳に包まれている。
朝にはまだ、早い時間らしい。
心臓は少し早鐘を打っていて、気持ちを落ち着けるために、レオンは深呼する。
ずいぶんと懐かしい夢を見た。
姉と指切りをして――ずっと一緒にいようと、約束をした日の夢。
レオンはかつて指切りをした日の小指を、己が目の前に掲げ見た。
子どもながらの無邪気な約束で、あの頃は信じていたのだ。互いが互いの唯一で、ずっと一番近くに居続けることができるのだと。
(……約束は守られなかったね)
自分にとって姉は今も唯一の存在だが、姉はちがった。姉の唯一はレオンではなかった。
姉と夜をともに過ごすのは、もう、自分ではない。
かつて約束を交わしたレオンの小指を、絡めるゆびさきは、もう、ない。
2023/12/04
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