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拍手お礼:出られない部屋



 壁に刻まれた文字を声にするなり、王子二人は同時に文字に向けて魔法と弓を放つ。
 実に息の合った攻撃だった。
 しかし魔法と弓の同時攻撃を受けた壁は砕けるどころか、ヒビひとつ入っていない。

「……条件を満たさないと、部屋から出ることができないというのは本当なのね……」

 ため息交じりに呟けば、レオンとタクミも深々とため息をつく。

「馬鹿げてる」

 口を開いたのはタクミだった。

「……部屋に入った全員が抱き合わなければ出られません……か。悪趣味な条件だね」

 次いでレオンが口を開く。
 視線の先には三人で横になっても余裕がありそうな大きなベッドがある。抱き合うとはつまり、そういうことだ。今この部屋にいる三人で、性行しろということなのだ。二人の言葉を借りるなら、馬鹿げていて、悪趣味な条件である。

「でも、条件を満たさないと、部屋を出ることはできないわ」

 レオンとタクミに向き直り、外套を脱ぎ捨てる。二人が息を詰まらせるのは同時だった。
 ベッドに上り、纏う衣服の釦の一つに手をかけると――血色を変えたレオンが駆け寄ってきて、釦を外そうとした手を止める。

「わたしは、いいの。条件を満たして一刻も早くこの部屋を出ましょう?」
「でも!」
「あなたたちだから、いいの。だって、レオンもタクミ王子も、わたしに嗜虐的なことや倒錯的なことは絶対にしないでしょう?」

 誰も好き好んで体を開くわけではない。一緒に閉じ込められた相手が、絶対的に信頼できる二人であったから、身を委ねることができるのだ。
 
「……本当にいいの?」
「二言はないわ」

 言い放つと、レオンは覚悟を決めたようだった。
 タクミも心が定まったようで、ベッドの上に上ってくる。

「優しくするから」
「責任はとるよ」

 それぞれに囁かれ、ベッドの上に優しく押し倒される。
 少しの怖れを押し隠し、微笑みを浮かべて二人を迎え入れた。




 24/04/30

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