僕のペット候補



ペットを飼ってみたいなぁとは確かに言った。

先日町でまだ小さい捨て犬を拾ったのだ。だが王宮に生き物を持ち帰るわけにもいかず、日頃仲良くしてくれている町の人たちに声をかけたところ一人が快く引き取ってくれた。わずかな時間過ごしただけなのに名残惜しく思うほど小さな子犬は可愛らしかった。

確かにペットを飼ってみたいと僕は言った。言ったけど。



「ちょちょちょ、待って待って!」



ギラリと光る牙が首に当たる。目の前の大きな影のその気になれば僕の首など一瞬で噛み切れるであろうその鋭利な牙に少しの身動きも出来ず固まったまま必死に待ったをかけたがグルルとひとつ鳴き声が返ってきただけだった。



「どうやら好かれたらしいな。セオドア」




フッと笑う声が聞こえて思わず見てないで助けてください!と叫んでしまう。身動きしたら身の危険を感じるので彼の顔は見れないが口の端が可笑しそうに上がっている事だけは想像できた。



「落ち着け。そいつはおとなしい。」
「僕の首を甘噛みしてるんですよ!説得力ないです!」



僕の目の前の大きな影ー彼が呼んだという飛竜ーは相変わらずグルルと重い低音で鳴きながら僕の首を牙の間に挟む。赤い舌で僕の首を舐めた。



「うわっ」
「仲良くしたいらしいぞ?戦闘でも助けてくれるいい奴だ。打ち解けておくのも悪くないと思うぞ。それに…」



この前ペットが欲しいと言っていただろと口の端を上げる彼にそれはそうですけど!と反論した言葉は首にかかるつるりとした感触に引っ込む。僕の何倍も何倍も大きい飛竜の迫力は満点でまともに接したことがない分どうしていいかわからない。撫でてやれとの彼の言葉に恐る恐る手を伸ばせば飛竜は甘噛みをやめて僕の手に頭を擦りつけた。



「すごい…」
「もう少し打ち解けたら背にも乗せてくれるだろう。」



飛竜の背は太陽の光にきらきらと輝く。見た目通り硬い首の感触に思わず呟けば飛竜はより強く僕にすり寄ってきた。もっと撫でろと言っているように思えて両手で飛竜の頭をよしよしと撫で回せば見事に長い尻尾がぶん!と一振り風を切った。



「ペットにはさすがに出来んがな。少しは
気が紛れただろう。」



まだ撫で足りないらしい飛竜がぐりぐりと僕の胸を押すものだから力の強さに思わず尻餅をつけばカインさんも隣にあぐらをかいた。
主人なのか友人なのか彼らの関係はよくわからないが隣に座ったカインさんを認めると飛竜は僕の胸から頭を離す。代わりに僕らの間に頭を挟んだ。僕とカインさん両方に同時に撫でて欲しいとでも言うようなその仕草に見た目の怖さは何処へやら、大きな体で甘える飛竜が可笑しかった。



「可愛いです。」
「言っただろ。こいつはおとなしいんだ」
「…見た目が怖いですよ」



両脇から撫でられてご満悦らしい飛竜はフシューと満足そうな息をついた。そんな飛竜を苦笑しながら撫でるカインさんとふいに手が重なる。



「ありがとうカインさん。」
「…気に入ったならば良かった。」



飛竜の鱗のようにつるりとした手を軽く握れば彼は少し微笑んでくれた。思えばこれはいい雰囲気なのではと気付いて急にドキドキしてきた僕の鼓動を感じたのかはたまた忘れ去られたのが不満なのか間の飛竜がグルグルと鳴いた。












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