未来を約束して、







「ねぇ、どこ行くの?」
「…ん?着いてからのお楽しみだよ」


とある日。
ユリウスは休みだから出掛けよう、とリティルを連れ出した。付き合って1ヶ月半、あの日から一週間程経った日のことだ。


「え、こっち?」
「そう、こっち」


ユリウスと指を絡ませて手を繋ぐこともだいぶ慣れた。トリグラフでユリウスは人気というか、有名人だから、街を歩いていると色々な人に話し掛けられて、それに応えている。街のおじさん達に「彼女か?」とニヤニヤされながら聞かれても、ユリウスは「はい」と笑って答える。「自慢の恋人ですよ」と私をおじさん達の前に出して頭を下げると「いい子見つけたな!」、「大事にしろよ?」と笑顔をくれた。



「いいの?」
「当たり前だろ?リティルは俺の自慢の恋人なんだから」


ふわり、リティルは柔らかな笑みを浮かべた。嬉しくて仕方ない。ユリウスが、そんな風に言ってくろるなんて嬉しかった。




「さ、着いた」
「……え、ここ」


着いた、と止まったのはユリウスの職場。クランスピア社の前だった。リティルは困惑してユリウスと建物を交互に見る。
入るぞ、とまた歩き出したユリウスの考えがわからなくてリティルは手を引かれるままに歩いた。



社に入ると、ユリウスに気付いた社員が頭を下げる。女性社員からは黄色い声もあがっている。
ユリウスの隣、つまりリティルに目を向けた社員達はざわつき、コソコソとリティルを横目で見ながら話し出した。「あの女は誰だ」と。


「ユリウス…、」
「胸を張っていればいい。
…隣を、歩くんだろう?」

「、うんっ」


下は見ない。
だって、疚しい関係じゃない。

私はユリウスの恋人。
ユリウスは私の恋人。

胸を張って、前を見よう。誰にも負けないって、ユリウスに言ったんだから。

私は、弱くない。



「ユリウス室長、そちらの方は?」


一人の女性社員が、ユリウスに問う。きっと、この人もユリウスを好いてる人。私を見る目は、鋭い。


「前に言っただろ恋人ができたって。
あまりに信じてもらえないから、連れてきたんだ」
「はじめまして」


にっこり、笑ってみせた。
口元、引き攣ってないかな。ちゃんと、笑えてるかな。

さらにざわつくエントランスに、一人の声が響いた。



「ユリウス室長じゃないか」

「…社長」


赤いスーツ、大きな身体、どこかで見たことのある色の髪色。社長と呼ばれたその人を見ると、聞いたことのある声がリティルを呼んだ。


「リティル?」

「え、…あ、ヴェル?」
「久しぶりね」
「うん、久しぶり。
元気そうで良かったよ」
「リティルも、幸せそうね」


ヴェルはリティルとユリウスを見て、笑う。するとリティルに目を向けたビズリーの声。


「…君は?」

「あ、」
「私の恋人です、社長」


なんだか怖くなって、ぎゅっと強く手を握ると、ユリウスは大丈夫だといってくれているように握り返してくれた。少しの安堵。


「そうか、君が…」

「はじめまして、リティルといいます」
「クランスピア社社長のビズリーだ

それにしても、今まで恋人には会わせないと言っていたのに、どういう心境の変化だ?」

「たまたまですよ」


はっはっは、と笑ったビズリーにリティルはぱちぱちと瞬きした。ユリウスと社長は、仲が悪いのだろうか?大丈夫なのか、


「なかなかいいお嬢さんじゃないか。大事にしてやれ」
「もちろんですよ、手放すつもりはありません」

「結婚も、考えてるんだろう?」


ビズリーの言葉に、エントランスが揺れる。ユリウスの言葉を気にしているだろう女性社員の視線が突き刺さる。


「それは、彼女次第ですね」


にっこり、ユリウスは笑ってリティルを見た。ユリウスの言葉に止まるリティル。みな、リティルを見る。


「リティルさんは、ユリウスと結婚するつもりはあるのか?」

「あ、の…」


えっと、とヴェルを見ると笑顔をくれて、ユリウスを見ると微笑んで頷いてくれた。リティルはビズリーを見て、「はい」と笑顔で答えた。


「彼が私を傍にいさせてくれる限り、私は傍にいたいと思いますし、

彼が私との結婚を望んでくれるなら、私はもちろんお受けするつもりです」


ずっと一緒にいたいです。

リティルの笑顔は、幸せで溢れていた。ビズリーはそうか、と言った後にリティルに近付き、リティルの肩を叩く。


「ユリウスをよろしく頼むよ。

…ユリウス」

「はい、」
「幸せにしてやりなさい」


ヴェルを連れて社を出て行ったビズリー。ヴェルはすれ違い様に「おめでとう」と言ってビズリーの後ろをついていった。

社長の去ったエントランスでは、多くの社員がユリウスにおめでとうございます、と声をあげていた。ユリウスも嬉しそうにその声に応えて、リティルも嬉しくなった。

祝福してくれた。ユリウスの恋人と認めてもらえた。


「リティル」
「なに?」

「こんな大勢の前は嫌かもしれないが…許してくれ」


繋いでいた手を離して、ユリウスはリティルと向かい合う。ユリウスはポケットから小さな箱を取り出して其れを開けると、中から、二人の未来を繋ぐ環がキラリ、光っていた。


「、これ…!」

「俺と、結婚してくれないか?」




未来を束して
(答えはイエス、)



20121117

ユリウス兄さんは公開プレイがお好きな様子←違う

社員達の前で言ったのは、やっぱりヒロインを守るため。
社長にも合わせて…というかビズリーとは時間を調整して話しを合わせてもらって…たらいいなぁ、と思います(笑)

本編での二人は仲が良くないので。

連載終了後のあとがきに、色々と書く予定です。

次回で完結です\(^O^)/