貼付けたような笑みを向けられるのはいつものこと。その瞳に私が映っていないのはわかっていたことで、決して交わることのない思いだということもちゃんとわかっている。時折切なそうに、哀しげに瞳を揺らして窓の外を見る彼が見ていて此方も切なくて。一人じゃない、誰も貴方を置いていったりしない。何度裏切られたって、皆が貴方を一人にしたって…私だけは貴方を信じてるから。


「アルヴィン、」
「…、なんだ、リティルか」
「なんだとは失礼しちゃう!」


真面目な話をしたくても、はぐらかされるのが目にみえているから、おちゃらけた態度しかとれなくて。心の奥の闇は、きっと私ではどうすることもできなくて。私を見てほしいと言えば、貴方はなんて言うのかな。怖くて言えないけれど、思いが伝わることはない。ただそれだけははっきりしていて。













汚い仕事ばかりしてきた。人を傷付け、裏切り信用をなくして一人でやってきた。近付いたのだって仕事のためで母親のためで、自分のためで。馴れ合うつもりなんてなかったし、誰かを好きになることなんて今までなかった。
目の前にいる彼女は、心地好い距離感を保ちながらも、自分に好意を寄せていることくらいわかってた。その気になりゃあ抱くことだってできたし甘い言葉一つでも吐いてやることだってできる。自分を見て、時折ふと悲しげに笑う彼女を、傷付けたくないと思った。


「おたくさ、」
「ん、なーに?」
「俺なんかに構ってないで観光してくりゃいいんじゃねぇ?」
「ん、そうだね
じゃあ観光でもしてこようかな」


やんわりと突き放す言葉を吐くと、笑ってそれに従う彼女は、自分には勿体なくて。汚れも何も知らないような綺麗な目は、正直苦手だった。けれど悲しげな目を向けられると、泣きたくなるほどに切なくて抱きしめたくなったも確かだった。

馬鹿だな、なんで俺なんだよ。こんなどうしようもない屑野郎放っておけよ。お前イイ女なんだから、他に男は沢山いるだろ?何も言わずにただ涙を零すリティルに、汚い自分が嫌で嫌で仕方なくて。


「ねぇアルヴィン、肩揉んであげようか?
私ね、アルヴィンの望むことならなんでもするよ!」


無邪気に笑う彼女はとても綺麗で、可愛くて愛らしくて愛しくて。けれどそれと同じくらい、彼女が嫌で。どちらも大きな気持ちなのだ。傍にいてほしいと思う反面、消えてほしいと思う自分。いつか彼女をも手にかけなければならないと思うと、なんともいえない気持ちになった。









好きだなんて伝えれない、だからただ貴方の願いはなんでも叶えてあげたいと思う。国の王を殺せとか言われても、彼が望むなら殺しにいく。私には彼しか見えなくて、ただ純粋に私を拠り所にしてほしいと心から思ったのだ。



「…死んでくれ」
「え…?」
「俺の願い、おたくに死んでほしいんだよ」


初めて、向けらた瞳、初めて瞳に私が映る。いつもとは違う、感情を篭めた微かな笑みが嬉しくて、ただ嬉しくて。死んでくれと言われて悲しいとも思ったけれど彼が望むのなら彼がそれで幸せなら、彼の望みを叶えたい。


「いいよ、」





貴方の願いなら
なんでも聞きます



(あいしてる)
(あいしてた)
(幸せになって)
(お前がいないのに無理だよ)

((交わることのない互いの気持ち))


(最期に見たのは涙を流すあなた)
(なかないで、)
(わたしはしあわせにできない)





20110930

エクシリア企画サイト"Ti Amo!"様に参加したアル夢。

タイトルからしてギャグかシリアスだなぁと思って結果シリアスに。
あれ、シリアス苦手なのに←

素敵な企画に参加させていただき有り難うございました!