TOX | ナノ

…好きなの、




「ガイアス!」


謁見の間に行くと、ガイアスとウィンガルが安心したようにホッと息をついた。


「アミュレイン」
「ミラが…ミラが死んだって、」


聞いたのか、とガイアスが言うと、アミュレインは目を見開いてその場に座り込んだ。本当、だったんだ…ミラが、本当に。


「、ジュード達は?私、行かなきゃ」

「奴らの行方は知らぬ。
マクスウェル亡き今、もう奴らと同行しなくてもいい」


ガイアスの言葉に、アミュレインは胸が苦しくなった。確かに、そうだ。私はガイアスの側近で、一緒にいたいと思い続けた人。私に居場所をくれて、必要としてくれた、大事な家族。けれど、

けれど。


「私、わたし…っ」

「自分が誰であるか、考えてみろ」


肩を震わせ、握りこぶしを作りながら俯くアミュレインに、ウィンガルが言い放つ。わかってる、わたしはアミュレイン・ラグレイスだ。ガイアスの側近で、ガイアスのために全てを捧げると誓った。でも、


「私、アルヴィンが好き…!
アルと、一緒にいたいの!一緒にいるって、言ったのよ…っ!」


声も、震えた。
ガイアスはきっと許してくれない。ウィンガルは、絶対に許してくれない。そして私はプレザを、裏切ったんだ。プレザを傷付けたアルヴィンが憎くて仕方なかったのに、私は、アルヴィンを好きになってしまった。アグリア、呆れてる?ジャオがここにいたら、何て言うかな。怒る、かな。


「…これから先、この城から出れることはないと思え」
「っ、そんな…!」

「自分の立場を弁えろ。
お前は、陛下の側近であり、隠密部隊の人間だ」

「…あの男のことは忘れろ」




陛下から離れることは許さない。冷酷なまでの言葉に、アミュレインはついに涙を流す。
やっと、やっと知った本当の恋はあっさりと終わりを告げようとしていた。嗚咽を漏らしながら泣き出したアミュレインをプレザが抱きしめる。


「…泣かないで
ほら、部屋に戻りましょ」
「まだ目が覚めたばっかなんだ。ネェちゃん、行くぞ」


プレザ、アグリアはアミュレインを立ち上がらせると支えながらゆっくりと歩きだす。プレザがガイアスに頭を下げると、ガイアスは頷いた。


















「…ねぇ、アミュレイン
今日、一緒に寝てもいい?」
「…ん、いいよ」
「ババァだけ、なんて許さねェぞ」
「ふふ、アグリアも一緒に寝よう?」


当たり前だろ、と顔を背けたアグリアにプレザは笑う。各自部屋に戻り寝巻きに着替えてアミュレインの部屋に来ると、ノックせずにドアを開けた。


「…煙草、やめてなかったの?」
「たまに、吸いたくてたまらなくなるの」


二人はわかっていた。アミュレインが煙草を吸うときは、殆どが…悲しいときや、どうしたらいいかわからないときだと。

久々に3人で眠ることをアミュレインは嬉しく思っていた。今は一人になりたくなかったから、そして二人といると安心したからだ。


うつらうつらとしだしたアグリアは数分で眠ってしまい、プレザはアミュレインに向き直る。それに気付いたアミュレインもプレザに向き直り、目を逸らした。


「…ごめんね、」
「あら、何が?」

「アルヴィンのこと、ごめん」
「…アンは謝らなきゃいけないことをしたの?」

「私、ア・ジュールの人間なのに、ガイアスの近くにいなきゃいけないのに

プレザに、酷いことした男なのに、なのに…!」


好きになっちゃったの、傍にいたいって、隣にいたいって、思っちゃったの。

ごめん、ごめんなさい。
私、ガイアスも、ウィンガルもプレザもアグリアも好きなのに、一緒にいたいって思うのに。



「っ、会いたいの…っ」




…好きなの、


(アル、)



20121227

ゲームでいう、最終章に突入したところです。
ジュード編でもミラ編でもない、オリジナルストーリーとなっています。

これから、繋げていきますが…!

最終回が見えてきました。
寂しいやら、嬉しいやら、です。




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