「よかった、」
「はいっ」
レイア、エリーゼの声で我に返ったアンは、アルヴィンから離れようともがき始める。が、アルヴィンは逃がさんと言わんばかりにきつく抱きしめアンは途中で諦める。…どうにでも、なれ。
「アルヴィン君とアンがうまくいってよかった…ね、ジュード」
「う、うん…よかった」
目の前で繰り広げられたまるで昼ドラマのワンシーンのような先程の二人にあてられたのか、ジュードの顔は真っ赤だった。かくいうレイアやエリーゼも頬が赤く染まっていたのだが。
ミラは「ふむ」と顎に手を当てて観察していたし、ローエンは「若いっていいですなぁ」とジジイ全開の発言をしていた。
「……べ、別に一緒にいるとは言ったけど、別に、別にアルヴィンのことが好きってわけじゃないわ」
「ふふ、アン、顔真っ赤です」
「ほーんと、可愛いなぁアンは」
「可愛くないわよ、別に…って、違う私ガイアスのところに…」
「…なにか言ったか?」
「だからガイ………んむっ」
にっこりと笑ったアルヴィンに、アミュレインはすっかり忘れていた。「ガイアスガイアスいい加減にしろ」、「アイツの名前呼ぶなよ」と言っていたことを。
過去、ちょっとしたことで何故か嫉妬するというお馬鹿っぷりをアミュレインに披露していた男だ。半ば受け入れたアミュレインがガイアスと呼ぶことに過敏に反応することは目に見えていた。
アミュレインがガイアス、と言い切る前にアルヴィンはアミュレインの唇を奪う。言わせない、お前は俺のだ。といいたげなアルヴィン。あぁ、私は厄介な男に捕まってしまったようだわ。
「アン」
「…なによ」
「好きだ。アン、好きなんだよ」
「っ、何回も言わなくていい!」
かぁ、と顔を真っ赤に染めたアンに、アルヴィンは満足したようで、ちゅ、と音を立ててアンの首筋に吸い付く。ちくり、と痛みがしてピク、と身体を揺らしながら目を閉じたアン。
アルヴィンは、紅い痕を指でなぞってアンから離れた。
「な、な…っ」
「俺の、な?」
「っ、私は、わたしは…」
もごもごと口を動かすも次の言葉が出てこないようで、アルヴィンのジャケットの裾をぎゅっと掴み、見上げる。
「…ありがと、アル」
「あぁ、」
「はぁ…
なんか馬鹿らしくなっちゃった」
あーあ、と首をコキコキと鳴らしたアンは脱力した。気を張ってた自分が馬鹿みたい。
どんなに酷い言葉を言おうと、この人達は私に変わらない態度で接してくる。どこまでお人よし?馬鹿?
うぅん、馬鹿は私、か。
ガイアスに忠誠を誓っているのに、アルヴィンの手をとってしまった。
この人達と、一緒にいたいと思ってしまった。
私、私は…
ここにいたい
(でも、嫌じゃない)
20121119
ここはあれです。
通信機を拾った後のお話。
結局、アンは流されちゃうんです。
愛に飢えた子だから、人の暖かさに弱い子なのです。
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