TOX | ナノ

苦しいのは、




「来たわね、」



彼らが来たとき、なんだか。なんだかさっきまでのモヤモヤが一瞬だけ、和らいだ。何故かは、わからないのだけれど。



「ガイアス達は先に行っているわ
なにか聞きたいことはある?」



首を傾けていえば、ローエンが空中艦へはどうやって攻め入るのか、と問うた。


「ワイバーンを使うわ」
「城まではどうする?」

「勿論、大通りから突破するわ」
「そんな、無茶だよ!」
「そうです、
せめて二手にわかれて…」



ジュード、ローエンの順で言う。私は勿論大通りから突破したい。そのつもりだ。ただ、脇道を教えるだけ。それだけ。



「私達は私達、アナタ達はアナタ達よ。自分達の進むべき道をただ進めばいいだけ

干渉しないで」



それと、と言葉を続ければエリーゼと目があった。途端に彼女の瞳はきらきらと輝き、笑顔を向けられる。



「…教会の脇から市街に続く道があるの、アナタ達はそこから、ガイアス城に向かってちょうだい」



くるり、ガイアス達が進んだであろう道を向く。さぁ、私の仕事は終わった。これでガイアス達と一緒にいられる。







「アン!」











「…離して、エリーゼ」
「や、です!
アンも、アンも一緒がいい、です」



後ろから、どんと抱き着かれたのは二度目だった。エリーゼがぎゅうぎゅうと抱き着いてくるから、私は胸が痛くなる。この子は敵だ。今は停戦中ではあるがガイアスの敵になる人間の一人なのだ。

情なんてない、駄目。駄目よ。



「アン…一緒に来て、?」
「そ、そうだよアン!
私達と一緒にガイアス城まで行こう?」



ね?と笑うレイアを見る。馬鹿みたい、私なんて放っておけばいいのに。



「そうだね…アンは強いけど女性だし、ボク達と一緒に行こうよ」
「そうだな…アン、行くぞ」


「な…」


…にを言ってるの、この人達。お人よしジュードだけならまだしも、ミラまで。私が敵だと明らかにわかっているのに。私は自分達を裏切った女なのに。酷い言葉で傷つけたのに、なんで…!



「…馬鹿じゃないの?」


「え…?」
「なんでわざわざ誘ってくれちゃうわけ?私はガイアスと一緒に行きたいの。

それに…自分達を裏切った人間と一緒に行くだなんて、頭大丈夫?」

「…勘違いするな
お前は戦力になるから行動を共にしようと言っただけだ」



ミラの声が響く。

そうか、戦力か…そうよね、うん。ミラが言うならそうなのだろう。



なんで、胸が痛いんだろう


なんで、泣きたくなるんだろう


なんで、なんで。




苦しいのは、



(エリーゼの言葉が嬉しかった)




20120418


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