どの位そうしていたのだろうか。肩にかけられたジャケットのお陰で寒さは凌げているし、抱きしめられているから暖かい。
かわりに胸がギュッと締め付けられるような感覚で、なんだろう…アルヴィンを見ていると泣きたくなる。
「…もう遅いし、そろそろ帰るか」
「え、あ…う、ん」
ゆっくりと離れていくアルヴィン。寒さと共に、なぜだか切なくなった。誰かに問い掛ければ、答えてくれるだろうか。
「んな顔すんな」
「…え?」
「泣きそうな顔してる」
「っ、してない!」
顔を背けると、けらけらと笑うアルヴィン。
どうしてだろう?アルヴィンは、私の敵なのに。プレザを傷付けて裏切った、最低な男。友人を傷付けた男で、殺してやりたいと、思っていたのに。
いつからだろう、アルヴィンを目で追うようになったのは。
いつからだろう、笑っているのに笑っていないと気付いたのは。
いつからだろう、アルヴィンを守りたいと思ってしまったのは。
変わっていく思いは、止められなくなっていく。自分が自分じゃないみたいで、この気持ちを知らない私は、もどかしくて。
「アルヴィン」
「どうした?」
「一人じゃ、ないからね」
「!!」
"なに言ってんだよ"と笑うアルヴィンは、ちゃんと笑えていない。
ジュードは、なんだかんだいってアルヴィンを信頼しているように思える。裏切られても、まだ信じたいと思う気持ちがあるのだろう。
前を歩き出していたアルヴィンは振り向き、また私に近付く。なに?と顔をあげれば、私はアルヴィンにまたキスされていた。
「う、んんっ」
抵抗する間もなく、ぬるりと口腔に入り込んできた舌から逃げることもできず、ただただキスを受けていた。
甘い口づけに酔いしれ、アミュレインはがくん、と膝を折ってしまう程に力が入らなくなっていた。目は虚ろで口の端からはどちらのかわからない唾液が伝う。ぺろりと己の唇を舐めたアルヴィンは、欲に濡れた瞳でアミュレインを見下ろす。
彼もまた、自分の気持ちに整理がつかないでいた。ただ、泣き顔は見たくないと思うし、優しく笑みを向けられれば苦しくなる。慈しむように、自分を想う言葉を言われれば、目の奥が熱くなり胸の奥も熱くなるような。
そして直ぐにでも抱きしめてキスをして、できることなら抱いてしまいたい、全てをぶつけてしまいたいと思う程に、アルヴィンはアミュレインに惹かれていたのだ。
今まで感じたことのない気持ちに、二人は困惑するばかり。
「アル、っ…はぁ、」
「…わり」
「だい、じょぶ」
「違う」
「な…に?」
荒い呼吸を繰り返すアミュレインに、アルヴィンは目を反らさない。かわってアミュレインは、キスには大分慣れているはずなのに、アルヴィンとのキスで心臓が爆発しそうな勢いだった。
濡れたぽってりとした唇に、アルヴィンはごくりと生唾を飲み込む。アミュレインは、アルヴィンの言葉を待ち、見上げていた。
「我慢、できねぇわ」
「っえ、なに…?」
虚ろな瞳、濡れた唇、艶のある声。不明瞭な気持ちに苛立ち、どうしたらいいかわからないアルヴィンを"男"を煽るのには充分すぎた。
アミュレインの膝裏と背中に腕を回し、所謂姫抱きをして抱き上げると、先程いた場所よりも奥に向かって歩いていった。
不明瞭な感情
(駄目だと、わかっているのに)
20120125
間に合った…!
次回は裏の予定なのでパスワード付けます。
18歳未満の方が裏ページを見なくても大丈夫なように小説を打ちますのでご安心くださいませ。
閲覧ありがとうございました。
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