TOX | ナノ

奴との共鳴。

たった数日、されど数日…だ。


まだ数日しか一緒にいないというのに、私は随分と歓迎され親しくなることができた。一人を除いて、だけど。いま、ラコルム街道を抜けてシャン・ドゥに向かっている。そこで少しばかりアルクノアとして過ごしていた場所だ、多少の不安。けれどこの身なりならば大丈夫だろう。


「ねぇアン」
「ん、なぁに?」
「アンは、ワイバーンを見たことある?」


一行は、シャン・ドゥにいる部族にワイバーンを乗せてもらうよう交渉するらしい。ガイアス様にはシャン・ドゥに行くと言ったし、アルクノアにも連絡した。(アルクノアに引き続き潜入せよとの命令でいっぺんに2つの任務が重なってるってわけで)…きっと、何かを仕掛けてくるのだろう。


「ワイバーンはないかなぁ…すごく大きいんでしょ?」
「みたいだよ、楽しみだよねーっ」
「はい!楽しみ、です」


レイアとエリーゼが随分と私に懐いた。こんな格好をしてるにも関わらずにこにこと笑みを向けて、"アンは友達"だと言う。嬉しい、とかそんな事よりも…時々向けられる目に、吐き気がした。特別知り合いというわけでもない、けれど。


「なぁアンちゃん」
「なに?」
「眼鏡外さねぇの?」
「…だって恥ずかしいもん」

"外したほうが可愛いぜ?"とケラケラ笑う男、アルヴィンに、また吐き気がした。気持ち悪い、話し掛けないでほしい。


「アルヴィンが興味を持つとは…珍しい事もあるものだな」
「ミラ様」
「よしアン、私にも眼鏡を外した姿を見せてくれ」
「え、…それはちょっと」

「私も見たい…です!」
「私も!そうだ、女の子だけに見せる、とかどう?」

何故か興味を示したミラに便乗してレイアとエリーゼも参戦。この男に見せるくらいなら、この子達に見せる方がまだマシだろう。"わかった"と了承すると、レイアとエリーゼが手を叩いて喜んでいた。


「じゃ、見せて見せて!」


男達から少し離れた場所に連れてこられて、眼鏡をゆっくりと外した。視力はいいから、少し度の入ったレンズはただの障害であり。其のレンズがなくなり視界もクリアだ。数日ぶりの裸眼に少しだけ嬉しくなった。


「可愛いいぃぃい!」
「え」
「アン、綺麗…です!」
「うむ、眼鏡がないほうがいいな」


レイア、私、エリーゼ、ミラの順で話す。思いの外大きい声だったレイアに苦笑して、エリーゼにありがとう、と頭を撫でた。シャン・ドゥで衣装チェンジね!とレイアとエリーゼが張り切っており、ただ笑うしかできなくて苦笑を零した。

ぱちり、男…アルヴィンと目が合い、にこりと笑みを向けられた。直ぐに目を逸らして、ミラ達の方に走った。後に、戦闘。私が潜入前に戦闘したランドーゲコゲコとスカンキーだ。ゲコゲコ気持ち悪い…!


「やるよエリーゼ!」
「わかりました!」

「老いぼれは一人でいきますよ!」

「行くよ、ミラ!」
「了解した」


戦闘が始まり次々と共鳴している。ローエンのみ共鳴せずに戦っていて、共鳴しようと鞘におさまる剣を握った。刹那、腕を強く引かれ走り出し、其の男は笑って、言った。


「ついてこいよ、アン」
「…言われなくても!」



奴との共鳴。



(戦いやすい、なんて)
(思ってないんだから)



20111008

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