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私の居場所。



「ねぇ、アン、でしょう?」


何を言えばいいのか、わからなかった。



びくり、肩が震えた。
違う、違うと答えなければ。まだ、まだバレちゃ駄目なのだから。


「だから、私は…」

「…アミュレイン」
「ガイアス、さま」


首を振るガイアスに、あぁもう終わりか、となんだか笑えてきた。


「まだ、騙されててほしかったなぁ」


バレてしまった。私の存在が、私の正体が。彼らを裏切っていたのは、アルヴィンだけじゃなかった。むしろ私が一番、彼らを裏切っていたのだから。

"嘘、"とエリーゼの声が聞こえた。嘘、嘘だよね?とジュードとレイアも言っていて。ローエンは目を伏せ、ミラはあまり驚いてはいないようで、アルヴィンは、深い溜息をついた。


「嘘、です!だって、アンは…!」
「アミュレインは我が側近。マクスウェルの行動を逐一報告していたまでだ」

「嘘、だよね?、アン!」
「っ、」


目を反らした。彼らを見れない。私は、私はガイアス様の側近で、彼らの監視をしていただけ。そう、それだけだ。泣き出しそうなレイアと涙を流すエリーゼ。馬鹿よ、二人は。なんで泣くの?私なんかいなくてもいいじゃない、私は敵なのに。なんで、


「…私は…ガイアス様に、忠誠を誓っているわ」

「っアン!!!」
「殺したいなら、殺せばいい」
「、!」


隠し持っていた銃をジュードの足元に撃つ。咄嗟に避けたジュードに内心ホッとしている自分がいてその思いを打ち消そうと、アンとして使っていた剣を抜いた。へたりと座り込んでしまったエリーゼとレイアはぽろぽろと涙を流して、こちらをただ見ていた。


「アミュレイン」
「…はい、」
「相手にするな」


ガイアス様が、部屋を出ていく。"来い"と言われて、彼らに背を向けた。

ジュードが、叫ぶ。
どん、と腰に痛み。振り返るとエリーゼが抱き着いていた。


「いかないで、アン」
「…エリー、」
「ガイアスの側近でもいい、です!だから、だから!」


腰に巻き付く彼女の手を、そっと離した。彼女の目線に合わせて頭を撫でてやり、彼女にしか聞こえない声で、呟いた。


「ごめんね、大好きよ」
「アンっ」

「…さよなら」


アン、と叫ぶエリーゼの声。振り返っちゃ駄目。彼処にいたくなるから。離れたく、なくなるから。ごめんね、ごめんなさい。私を、嫌いになっていいから。


「私の名はアミュレイン・ラグレイス。貴方達の、敵よ」


次に会うとき、私はアミュレイン。二度と、アンには戻らない。



私の居場所。



(どうかお願い)
(私を忘れて)




作成20111011
公開20120107

結構前から決めていた話。エリーとレイアが懐いて酷い話←

エリーは裏切られてもなお、彼女を信じたいと願う。



本当はこういう風にバレる予定じゃなかったんですが、今バラしとかないと後々大変なので←




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