「…結局その男を信じるというのか
意外と甘いな、マクスウェル」
目を閉じて一度深呼吸する。目を擦り、涙を拭いてウィンガルが言うと同時にミラ達に目を向けた。
「私達を此処へ導いた狙いはなんだ?」
「我らはヤツらと雌雄を決すべく、立つ
お前たちが勝手にヤツらに挑むというのならそれはそれでいい」
「だが、その前にお前には話してもらうぞ
お前がひた隠しにしてきた断界殻のことをな」
ミラは、断界殻という存在を隠していた。が、それをガイアスが問いただすと、目を閉じながら答えた。
己が昔、2000年前に造ったものであると。
断界殻の外にはもう一つの世界があることも明かしたミラ。
エレンピオス、それはアルヴィンやレティシャさん、こちらの世界にいるアルクノアの人間が帰りたいと切に願う故郷。
「アルクノアは帰りたいのよ、エレンピオスに
そうよね、アルヴィン?」
「…あぁ」
かつん、とヒールを鳴らしてウィンガルの斜め前まで歩き、にっこりと笑って問えば、沈黙の後に返答される。けれどレティシャさんが亡くなった今、レティシャさんのために汚い仕事をしてきたという彼は目的を無くしたのではないかと思う。
「解せんな…ジランド、何を企んでいる?」
「え、どういうことですか?」
エリーゼの問いにローエンが答えた。アルクノアの目的とジランドの行動はそぐわない、と。
ジランドは、断界殻がある今の世界の在り方を、何かに利用しようとしているのかもしれない、というウィンガルの言葉に、はっとしたアルヴィンが声を上げる。
「そうか、異界炉計画だ…」
「あぁ?なんだそれ」
「通称、精霊燃料計画」
昔、まだアルヴィンがエレンピオスにいた頃、従兄が話していたらしい。
黒匣の燃料である精霊を捕まえるという話を。
「つまり、ジランドの狙いは精霊の囲い込みってワケ?」
その後、ジュードがそれはおかしいと発し、霊力野を持つ自分達も一緒にリーゼ・マクシアに閉じ込めるつもりだと言った。
その言葉に、ガイアスは怒りをあらわにする。当たり前だ、自分の民を資源にされるだなんてたまったもんじゃない。
「多分ジランドは海上にあるアルクノアの本拠地に戻ってる。
…おたくも乗ったこと、あるだろ?」
不意のアルヴィンの言葉に、きょとんし思考を巡らせる。"えぇ"と笑みを零しながらアルヴィンをみた。
「乗ったことくらいあるわよ、一時期潜入してたんだもの
…陛下、もし行くのなら、エレンピオスからの軍も来ていて、近付くのは難しいのでは」
「カン・バルクに停泊している、連中の空駆ける船を奪うのはどうかと」
ウィンガルの言葉に頷いた。確かに、それが一番効率がいい。
「よし、明日決行する!」
ガイアスの凜とした声が響く。鼓膜を揺らす声に思わず笑った。あぁ、なんて幸せだろう、と。
背を向けたガイアスについて、四象刃とアミュレインは部屋を出ていこうとする。
「待って、ガイアス!
一緒に戦ってくれるんでしょ
僕たちの目的は同じでしょ。だから…」
「冗談ではない」
「勘違いしてんじゃねーよ!」
「マクスウェルが勝手に断界殻をつくりだし、我らをこの世界に閉じ込めている事実…
これも知った以上は捨て置けん。お前達とはまた争うことになるかもしれぬ」
「そんな人達とは、必要以上に馴れ合えないわ」
「お前達は勝手にやるがいい。
が、我らの邪魔はするな」
「そういうこと、じゃあね」
「っ、待って、アン!」
部屋を出ようとした四象刃が足を止めた。ただならぬ殺気が沸く。
「やっぱり、アンなんでしょ…?」
断界殻、とは
(何を言えば、いいの?)
20120107
約一ヶ月更新していませんでした;
とりあえず、次回の分は随分と前に打ち込んでいたのですぐに更新予定です。
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