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女子のお友達

私は20歳、リィンは25歳、アーストは29歳になった。アーストはア・ジュールを統一しガイアスと名乗るようになっていた。
そしてリィンは、たまにだけど笑ってくれるようになり、なんていうか、最初と全然印象が違うというか、なんていうか。
それは、すごく嬉しかった。嬉しかったんだけど、も。


「いっ、」
「…!」


アーストに渡された書類を見ていたら、紙で指を切ってしまい顔を歪めると、瞬時に近付いてきてその手を取られ、ぷくっと浮き出た血をぺろりと舐められた。

(…あの時は倒れるかと思った)


「ふぉ、リィン!?」
「大丈夫か?」
「だだだだだい、大丈夫!!」


過度な触れ合い、というかリィンの接触に心臓が五月蝿く跳ねる。この気持ちがなんなのかなんて私はわからないし、教えてくれる人もいない。
アースト…じゃなくてガイアスから任される任務をこなす毎日だったから、私はわからなかった。
というか、知らなかった、のが正しいかな。


「…ガーベッジ隊?
それって、今ラ・シュガルで任務してる隊でしょ?」

「あぁ、そのガーベッジ隊が、失敗した」


ガーベッジ隊は女性の集まりだって聞いたことがあった。優秀な人が集まってて、今まで失敗たことなんてなかったらしい、なのに。

「生き残りが一人いる」
「ほんと?良かった、」
「その生き残りを、連れ戻せ」


ラ・シュガルに潜入しその生き残りを助け出すという任務を与えられ、私は直ぐに出発し船に乗り込んだ。

イル・ファンにいるという生き残りを捜していた。何処にいるか、なんてわからないから全て勘で動いてた。研究施設で、酷い仕打ちを受ける薄いピンク色の髪の少女を見つけ、少女に手を振り上げていた兵士を適当に気絶させて、喉を潰しておいた。

弱り切った身体を抱き上げて、最短ルートで研究施設から抜け出す。幸い、誰にも会わずに住んで船に乗り込めた、本当ならお風呂入れてあげたかったけれど、追っ手が来て捕まったりしたら全てが台なし。がたがたと震えている少女に目線を合わせて、できるだけ優しく、優しく微笑んでみせた。


「怖がらないで、私は貴女を助けに来ただけよ」
「助、け?」
「私はア・ジュール王、ガイアス様の勅命で来たの
貴女を、救いに」


震えはいまだ止まらず、少女はぱたぱたと涙を流す。

怖かった、怖かった、憎い、あの男が、信じていたのに、どうして、どうしてどうしてどうして!

わあわあと声を上げて泣き出した少女を抱きしめる。びくんと大きく肩が揺れたけれど、大丈夫、大丈夫からねと落ち着かせようと宥めていたら、ありがとうと、初めて柔らかな笑みを向けてくれた。


「私はアミュレイン・ラグレイス。貴女の名前は?」
「……ジル、ジル・ルーイン」

「よろしくね、ジル」


後に聞いたのは、彼女は恋人だったアルヴィンという男に偽の情報を掴まされて隊が全滅したらしい。居場所だった、信じていた、とまたはらりと流れた涙を拭った少女、ジルは真剣な顔つきで言った。


「私…陛下の役に立ちたい」
「歓迎するわ、ジル」


後の四象刃の一人、プレザとアミュレインの出会いだった。



女子のお友達



(アン、私、貴女のこと好きよ)
(ちょちょちょちょジル?え、ちょ、なになななななっ!!?)



20111204

プレザたんとヒロインの出会い。もうちょい深く書きたかったんですが、如何せん眠気のピークでして←

番外編で深くまで書きたいなと思っています!

閲覧ありがとうございました!

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