ファイザバード会戦からアーストは変わってしまった。優しいことに変わりはなかったけれど、あまり笑わなくなってしまったのだ。
「アースト、今いーい?」
「悪いが、後にしてくれ」
「…はーい」
近々、ロンダウ族の人達と戦わなければならない、と話し合っているのを聞いた。アーストは強いけど、怪我をしないか心配でたまらなかった。
まだ8歳のアミュレインは、ただ祈るしかなかったのだ。
夜、まだ幼いことからアーストはアミュレインと眠っている。それは昔から変わらなかった。
今日も今日とて、アーストの隣に潜り込み彼の腕枕でうとうととし始めるが、アーストは静かに言った。
「明日から数日、留守にする」
「アースト…ロンダウ族と、たたかうの?」
「知っていたのか」
「、ごめんなさい」
「いや、いい」
怒ってはいないようだ。それは彼の声でわかった。起き上がったアミュレインはアーストを見て、泣きそうになるのを堪えた。
いってらっしゃい、そう言わなくてはならないと。
「アースト、いってらっしゃい。気をつけてね」
「あぁ、」
アーストの野望を、アミュレインは毎晩聞いていた。そうなれば皆が幸せになれるのだと、幼いながらに思ったのだ。
いつか、彼がアウトウェイ族だけでなく世界を統べ、平和な世界になるように、アミュレインは願わずにいられなかった。
「幼名を捨てねばならないな」
「アーストじゃなくなるの?」
「そうだ」
アーストをアーストと呼べなくなる?それは悲しい。けれど、アーストという名前を捨てる、というか変えることが、平和への、アーストの野望への一歩なのだと言われては、嫌だとは言えなかった。
「…ガイアス」
「なに?」
「ガイアスって名前、かっこいいと思うの」
ふと頭に浮かんだ4つの言葉を紡げば、少し考えた後に、"ガイアス、か"とアーストは言う。
アーストも起き上がり、アミュレインの頭を撫でると、ファイザバード会戦以来回数の減っていった、アーストの優しげな笑顔だった。
「世界を牽引する者、か」
「え?」
「ガイアス、気に入った」
「ほんと?」
きらきらと瞳を輝かせたアミュレインに、"礼を言う"とまた頭を撫でるとアミュレインは"どういたしまして!"と笑った。
それは、後にア・ジュールを統べたアーストが、世界に轟かせる名だった。
命名ガイアス
(なぁにアースト)
(お前は、俺と共にいるか?)
(…?うんっ)
20111130
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