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覇王、幼少期

出会いは、実はあまり覚えていない。当時私は3歳でやっと言葉を話せるくらいだったらしい。

ガイアスは当時、幼名であるアーストと呼ばれていた。私は、ガイアス…アーストの父親であるアウトウェイ族族長に拾われた。大人ばかりだったからか、何も話さず、見ずに数日過ごしていたらしい。後に会ったアースト以外、怖くて堪らなかったのだけは少しだけれど覚えてる。



「名前もわからぬのだ
アースト、お前も話し掛けてくれぬか」
「わかりました、父上」


少年、アーストは部屋の隅で膝を抱えて怯える少女に近付き、同じ目線になるよう膝を折った。


「お前、名前は?」
「…なま、え」
「そう、名前」
「…あたち?」
「そう、お前の名前だよ
俺はアースト・アウトウェイ」


少年は、優しく問い掛けた。しかし元より優しい少年であったアーストは意識して優しく問い掛けたのではなく、ごく自然に問い掛けた。

少女は、初めて会った若い少年に安堵の息を漏らし"アミュレインてゆーの!"と言った。

アースト・アウトウェイ12歳。アミュレイン・ラグレイス3歳。その日、二人は初めて出会い言葉を交わした。

ファイザバード会戦の半年前の出来事だった。


アミュレインがアーストに懐くのに時間はかからなかった。アミュレインがアウトウェイ族に保護されて一週間後、アーストの父でありアウトウェイ族の族長が魔物との戦闘中に致命傷を負い、そのまま帰らぬ人となった。

「アースト、あの、あのね」
「どうしたアミュレイン、ゆっくりでいいから言ってみろ」


前族長、アーストの父の葬儀はアウトウェイ族総出で盛大に行われた。
族長は皆に信頼、尊敬され、だからか涙を流す人も少なくなかった。

母を亡くしていたアーストは、涙を流さず葬儀を終え、自分の服の裾を掴むアミュレインの頭を優しく撫でた。


「アースト、なかないの?」
「泣く?何故だ」
「パパ、いない、かなちい」


ふぇ、と泣き出したアミュレインにアーストは困惑した。何故少女が泣くのだと。父が死に、自分が継がなければならないことを理解していたアーストは、泣きじゃくるアミュレインの頭をただただ撫でた。


「アースト、かなしい」
「悲しくないさ」
「うそ、かなしいかお
アースト、えんえんしてる」


ひくひくとしゃくりをあげながらまだまだ片言で話すアミュレインの言葉に、アーストは考えた。


「俺が、泣いてる?」
「ほら、アーストえんえん、してるの」


アーストの顔を指差し、少年は己の頬に手をやった。濡れている頬に、驚くばかりで、なぜだかわからなかった。


前族長が逝ったとなると、息子であるアーストがアウトウェイ族の族長になることは明確であった。前族長を慕い、その息子であるアーストを特別視していたし、彼が族長になるだろうと皆が思ってはいた。

―…だが、まだ12歳の少年なのだ。

彼が嫌なのではない。まだ若い彼に族長という枷をつけるのは酷だと大人達は思ったのだ。


「来週の闘技大会で優勝する。それなら、俺が族長でも文句ないだろう?」


大人達の言葉は、自分のことを考えてのことだとアーストはわかっていた。いたからこそ、その覚悟の証明をすると、言ったのだった。


「アースト、がんばってね!」
「あぁ、お前が応援してくれるなら、俺は優勝するさ」
「うん、ゆうしょう!」


後から、"ゆうしょうてなーに?"と無邪気に聞きながら笑顔を見せるアミュレインを、アーストは守りたいと思うようになった。



覇王、幼少期



(アースト、しゅごいねーっ)
(あぁ、お前のおかげだ)



20111130


アーストォォォォ!!!
捏造、万\(^O^)/歳

ガイアスが族長になったこととか闘技大会とか順序は完璧捏造ですよっと(・ω・*)

とりあえず、ちびっこアミュレインはガイアス大好き←

そこからガイアス大好きヒロインが始まったのだった…。←

過去編はもう少し続きます。

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