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彼は、大きい

ザイラの森に着いたのは、日が暮れてからだった。

城に戻るはずだったのだが空駆ける船からの兵やアルクノアに占拠されてしまった。取り戻したくても、民に危害が加わったら、と仕方なくザイラの森にある教会にやってきたのだ。

そして、ミラ達も此処に辿り着くだろうと予測して。

アグリアも合流して、久々…でもないけれど、再会を喜んだのも束の間、ジャオが戦死した事を告げればアグリアの顔が歪んだ。


「冗談、だろ」
「…本当よ、アグリア」

「っ、テメェ!」
「っ、」
「アグリア、やめなさい!」


眉を寄せ、不機嫌なオーラ丸出しのアグリアは、私の肩近くの服を掴み、睨みつけられた。プレザの止める声も、聞こえていないようだ、


「なんの為の治癒能力だよ、アタシの回復したくせに、ジジィの回復しねぇとか頭おかしいんじゃねぇの!?」
「アグリア!」


プレザが、声を荒げた。私は何も言えず、けれどただ"ごめん"とだけ言い、教会の一室を出た。




「揉めていたようだな」
「リィン、」


過去の名を呼べば、彼の纏う雰囲気が変わった。今の名を呼べと言うことか。今度は、"どうしたのウィンガル"と言えば、溜息をついた彼が、一歩近付いてきた。


「お前が、ジャオに治癒術をかけなかった理由はなんだ」

低い声が鼓膜を揺らす。
私が、ジャオを助けなかった理由、それは。


「諦めた目をしてたの
けどそれは絶望でじゃない。
ジャオはエリーを助けて、ガイアスを守って死ぬなら本望だと言ったのよ」

「だが、お前が治癒せずジャオが逝き、我が国は大事な戦力を失った」

「確かに、そうよ。けど、
ジャオに、心残りはなかったの」


ジャオは、ジャオなりに、精一杯生きたし、成すべきことをしてきた。
ガイアスの野望が実現したとき彼はいないけど、それでもジャオは、ジャオが生きていたことには変わりなくて、四象刃として陛下も守れたことを誇りに思っていたし、私達が忘れなければ、ジャオは生き続けるのだ。

綺麗事だと、笑われるかもしれないけれど。





















「ガイアス様、
もう夜遅いから、部屋で休んでください」


外に出て、空を見上げている陛下の近くには誰もいなかった。教会の入口に陛下が2人立っているだけ。

後ろから話し掛ければ、私を見ることはなかったけれど、"気にするな"と一言言われた。


「…ジャオのこと、考えてたんですか?」


ガイアス様は動かない。
本当は聞かなくてもわかっていた。ガイアス様は、彼はジャオを信頼してた。


もちろん、四象刃全員を信頼してるけど、ウィンガルとはまた違う感覚での信頼だ。


「泣いたのだろう?」
「…ウィンガルに聞いた?」

「いや、予測したまでだ」
「ガイアスにはバレちゃうのね、」


ガイアスの服の裾をくい、と引く。するとこちらを向いたガイアスに抱き寄せられた。


「ガイアス?」
「…頼みがある」



「っ!!
わかった、…泣いてあげる」


"貴方の代わりに"と言えば、抱きしめられる腕の力が強くなった。ガイアスは泣けない。彼は王だから、強くあらねばならないから。


「貴方は、私を恨む?」
「何故だ」
「私は、ジャオを助けること、できたから」

「…奴が、望んだのだろう」
「そうよ、でも」
「俺がお前でも、同じようにしただろう」


"逆に、"と発せられた声に顔を上げると、優しげな瞳と、目が合った。


「奴の意思を尊重したお前に、礼を言おう」



彼は、大きい



(王たる器も、)
(人を思う心も)


20111129

ガイアス夢ではないです\(^O^)/←

ヒロインとガイアスの出会いは、20年前なのです。だから、ウィンガルよりもヒロインの方がガイアスとの付き合いは長いのです。

そのときは王でもなんでもなかったから、幼名を呼んでましたし、ガイアスを名乗ってからも呼び捨てでした。
それから、王になり様付けしたり陛下と呼んだり、周りに誰もいないときとか、怒っているときはタメ口に呼び捨てになります、多分。

次回はヒロインとガイアスの出会いを書きますかね(・ω・*)

本編は一旦おやすみ←


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