「…来たかマクスウェル」
ウィンガルの声が、響く。
「やはり戦場でまみえる事になった、か。悲しい時代だのぉ」
呟くように言ったジャオ。そして、プレザはアンを見た後、アルヴィンに目をやる。
「―…山狩りは楽しかったわ、アル」
「そいつは良かった」
この状況は、危ない気がする。ピリピリとした空気。互いに殺気立ち、いつ戦闘が始まってもおかしくない。
四象刃と戦うなんて、私にはできない。
でも、彼らとも
彼ら、とも?
―…戦いたく、ない
ぎり、と歯をならす。
私は、おかしい。彼らと戦いたくない?馬鹿らしい、そんなはずない。私は、
「ジランドを伐ったの?」
「答える義理はないな」
ジュードの問いに、彼を見ることなくウィンガルが答える。するとミラが、目を細くしウィンガルを見た。
「ならば話を変えるとしよう。…道を開けろ」
「うふふ、冗談でしょ?」
「槍は破壊する。
それでこの戦いはお前達の勝利だろう。
何故それで満足できない?」
プレザは、腕を組みくすりと笑いミラを睨みつけた。次いでミラが言い放ち、ジャオが一歩、前に出る。
「それが陛下の望みだからだ」
「この戦は通過点に過ぎない」
ガイアス様の望み、私達はそれを実現させるために動いている。ガイアス様が望むから、ガイアス様と共にある未来を。
「…ガイアス様、」
ぽつり、呟く。
いまだアンの腕を掴んでいるアルヴィンは、さらに強く腕を掴む。
まるで、行くなと言われているような。
「此処で争えば、貴方達は命を落とすかもしれません。
王を支える者が、いなくなるのですよ」
静かに、諭すようにローエンが言う。それにプレザが返し、ウィンガルとローエンが王に仕える者としての、前に出なければならない者としての責任を放棄した、と言った。
「アルヴィン、」
「…どうした?」
「離して」
「―…無理だわ」
どうしても離してはくれないようだ。確かに、此処で四象刃につくと後々面倒だし、任務云々で面倒。
けれど、仲間と戦うなんて私にはできないのだ。
今は、彼らと敵対してるミラ側にいようとも。
「私は一介の軍師。王には相応しい器が必要なのです」
「我らが王は、その器をもっておる」
「そして民を導くための道を、この先に見出だされたのよ」
「槍は、我らが陛下の力として貰いうける!」
ミラ達を睨みつける四象刃。アンを一度も見ずに、言い放った。
「何度も言わせるな。
クルスニクの槍は渡さない。どんな理由があろうとも、だ!」
「ミラの…マクスウェルの思いは邪魔させない!」
ジュードが叫ぶと、ウィンガルは増霊極を発動させ、黒髪が白髪に変化した。話す言葉はロンダウ語。この姿の時の、彼の言葉だ。
「(ふん、決着をつけてやる!)」
「くるぞ!」
「…しゃーねぇな」
「皆、油断しないで!」
「うん!」
みなが武器を構え、四象刃の殺気がひしひしと伝わる。
走り出したのはジュードとミラ。少し遅れてレイアが飛び出した。
後ろではローエンとエリーゼの詠唱が聞こえる。
「アン、戦え!」
アルヴィンの怒声にびくりと肩を震わせた。
戦う?プレザ達と?
「(悪いな、)」
ドス、と鈍い音。
切られてはいないものの、懐にウィンガル。肘で鳩尾を突かれ、がくんと膝が落ちた。
「アン!」
「…悪いけど、眠っててちょうだいアミュレイン」
す、とプレザが横を通るときアンにだけ聞こえる声で言われた言葉に、意識が段々と遠退いていった。
曖昧な気持ち
(私は、こんなにも弱い)
20111103
深夜更新です、
本当にすみませんorz
また明日…というか今日更新できるよう全力だします!
閲覧ありがとうございました\(^O^)/
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