此処に来るのは随分と久しぶりで、なんだか少し懐かしくなった。
「アン、行きましょう!」
「はい、歩いて歩いてー!」
「え…あの、ちょっと二人とも…?」
「アルヴィン君は近づかないでね」
「アルヴィンは変態、です…!」
イル・ファン。過去ジュードが通っていた医学校があり、クルスニクの槍をぶっ壊すという目的を果たすべく、研究所へ向かった。
途中、ミラとジュードを見て"指名手配の、"と子供が此方を指差し慌てたジュードがミラの腕を引いて研究所に急いだ。
そこには、倒れている兵士達。嫌というほど嗅いだことのある…血の臭い。ジュードが知り合いを見つけ走り寄ると、"ジュード先生、なのか…?"とその男は言った。
ここは医学校があるんでしょ?何故治療しないの、馬鹿じゃない。
別に、意味なんかなかったけれど、その男性に近付いて膝を付くと、"今治しますね"と笑ってみせた。
「"T-ヒール""」
「…うわ!」
「きゃっ」
ぶわ、とその場に風が起こりキラキラと光の粒子が降り注ぐと、その粒子が光って怪我人を癒した。
「傷が…」
「痛くない、痛くないぞ!」
その場にいた兵士の傷が、怪我が全て消えた。
「目が、」
後ろから、掠れた声が聞こえて振り向くと、腰を曲げ若い女性に支えられる老婆がいた。ぱちりと目が合うとその老婆は独りでに歩く。その様子に驚いたのは老婆を支えていた女性だった。
「おぬしが、術を?」
「…おばあさん?」
しわしわの顔、目から涙を零しながら、アンの手を握り"ありがとう"と何度も言った。わけも分からず戸惑っていたアンに、女性がいう。
「おばあ様は、目が見えていらっしゃらないの」
「…見えるのじゃ、私に、また光が」
"また、光にであえた"とくしゃくしゃな笑顔で、ぽろぽろと流れる涙を拭いもせずに"ありがとうありがとう"と、また言ったのだ。
その光景に、立ち尽くしたままのミラ達。彼女は一体なにをしたのか、本当に老婆の目が見えるようになったのか。
自分達には聞こえなかった彼女の声。それは確かに治癒術なのだろうが、ジュードの実家の医院で手伝いをしているレイアも、医学生であったジュードでさえもわからなかった。
老婆と女性が去り、その場には先程のジュードの知り合いの兵士が立っている。彼は、ジュードを見ると、"研究所が爆発されたんです"と言った。
研究所に向かうミラ。追われる身となったジュードとミラを、捕まえようともせず、彼は私に頭を下げた。
「おたく、何したわけ?」
「治癒術をかけただけよ」
「そうなんだろうけどよ」
「…はっきり言いなさいよ」
「おたくの術、聞いたことがなかったもんでね」
探りを入れる目。
アルヴィンはよく私にそんな目を向けるけれど、それに答えてやるほど私は優しくなんてない。
「アルクノアに売られたら困るし、それに…答える義理はないでしょ?」
前を行くミラ達には聞こえない声量で話すと"それもそうだ"と怠そうに笑った。
T-ヒール
(
20111013
本編全く関係ない件ww
完璧オリジナルだしアンの術のネーミングセンスゼロw←
英語わかんない…orz←
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