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ア・ジュール

近付くにつれて、足が重くなる。


部族の代表でイスラの婚約者がガイアス様に謁見を申し込んだ。久々の自国。久々の雪。寒いことなんて気にしなかった。先程、ハロウが来て一行から抜けて会いにくるようにと、ガイアス様直筆で書かれている手紙を受け取った。どうする。アルヴィンは、レティシャさんの一件から私をかなり警戒している。だから、


「…っ、」
「アン!」

「おい、大丈夫か!」
「…へ、いき」
「青い顔して何言ってんだよ」
「一旦、宿屋にいこう?」
「そうだな」


パーティの真ん中を歩いていた私は、ふらりとその場で身体を倒した。後ろを歩いていたアルヴィンと横を歩いていたレイアが走り寄ってきて、アルヴィンに抱えられ力無く返事をする。直ぐにジュードが宿屋に行くことを提案し、アルヴィンに抱えられたまま宿屋のベッドに寝かされた。


「寒かったから、かな」
「ゆっくり休んでいるといい」
「…ごめん、なさい」

「謝ることはない。熱が出たら大変だからな」
「ありがとう、ミラ」


勘違いしていたことがある。自称マクスウェルのミラが、とても優しいということ。今までは高慢で高飛車だと思っていたし、クールぶっているのか、なんて思っていたからで。人を慈しむ、優しい瞳をするミラに驚いていた。そんなミラに、安心してしまう自分が、なんだか自分じゃないように感じた。

「じゃあ、行ってくる」
「ちゃんと寝てろよ?」


ぱたん、と扉が閉まり、少しして窓を見ると、彼らが城に向かって歩きだしていた。…全員、ちゃんといる。宿屋の窓から、屋根にくるりと上がる。人並み外れた脚力は、こういう時に使うものだ、と笑えてきて。ぐ、っと力を入れて、城に向かい屋根を飛んだ。


「ただいま」
「あら、おかえり…って、何なのその服」
「その眼鏡も、どういうことだ」

「だって、アルヴィンにバレたら面倒だもん」
「髪も、そんな切り方で…」


"これはカツラ!"というと、無言で近付いてきたウィンガルにカツラを取られた。其れをぽい、と捨て去り、手櫛で髪を整えてくれる。その様子にくすりと笑ったプレザ。視界から消え、髪を綺麗にしてもらうとまたプレザは現れ、手には見たことのない服を持っていた。


「はい、アン」
「なに、コレ」
「貴女の正装よ」


有無を手渡され、着替えろと視線で訴えられる。溜息をついて影に隠れ、眼鏡を外して、袖を通してみると、何たることだ。スカートの丈が短すぎる。動いたらパンツ見えちゃうじゃない!胸も足も強調した、というか露出度の高い服は、羞恥心を煽られる服で、今すぐに脱ぎたい衝動にかられた。

「どう、着れた?」
「すすすスカート短いぃ!!」
「……戻っていたのか」


出るのを躊躇っていると、背後から聞き慣れた声。我が主、ガイアス様だ。くるり、振り向くと優しい笑みを浮かべた主が、私を見ていた。


「ガイアス様…!」
「…よく、似合っている」


顔に熱が集まるのを感じた。この人は真顔で言うから、こちらが異常な程に照れるのだ。腕を引かれて、玉座の前に行く。そこに座る陛下に膝をついて頭を下げると"顔を上げろ、そして立て"と続けて言われ言う通りにした。くすりと笑うプレザ、頷いているウィンガル。


「これから、マクスウェルが来る。お前も此処で話しを聞いていろ」
「…了解。
けどガイアス様、アンは宿屋で寝てることになってるから早めに戻りますね」


改めて今着ている服を見た。お尻ぎりぎり丈の黒いミニスカで、胸元も大きく開いている。足元がすーすーするけれど、プレザが膝上までのロングブーツを揃えてくれたからなんとか露出は少しだけ控えている。

"そろそろ来るだろう"と言われて、ウィンガルとは逆の位置に立つ。プレザは仕事があるからとその部屋を後にした。少しして、兵士からマクスウェルがきたとの報告に、部屋に招きいれた。



ア・ジュール




(脱ぎたい…)




20111010

こんな感じと意見を出したのはガイアスとウィンガル、そして賛同したジャオ。
デザインして特注で頼んだのはプレザ。胸元が大きく開いたのはアグリアが面白い半分で言ったことにガイアス達が大賛成したことから←

ア・ジュール組はなんだかギャク系になってしまいそう←



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