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本当の、狙い

また鐘が鳴った。


大人数が毒殺されたから、長いこと滞在することになるのだろうと半ば諦めていたのに、直ぐに鐘は鳴った。正気を失ったレティシャさんと話していると、鐘が聴こえて、また来ますと告げて部屋を出た。


「なにしてんの?俺の家で」
「っ、アルヴィン」


部屋から出ると、すごい剣幕のアルヴィンが立っていた。本当、母親のことになると顔が変わる。マザコンとはこのことだ。


「俺の母親に近付いた理由はなんだ」
「たまたま、扉を開けたら此処だっただけよ」


"それより、鐘が鳴ったから行きましょ"と背を押すと、何も言わずに歩いてくれたのが助かった。まだ、この男にもバレるわけにはいかないの。
闘技島には私達以外揃っていた。あまりにも早い決勝に困惑していた一同だったけれど、これもワイバーンを手に入れる為。

参加はミラのみ。アルヴィン曰く、先日のように無差別ではなくミラを狙うだろうとのこと。私達は散らばっていざという時に戦闘できる位置にいた。


「何よあれ」


ミラを狙う3人の兵士。いつ助けに入ろうかとタイミングを窺っていた。すると、突如エリーゼの声が聞こえた。


「返して!…ティポ!」


いつも大事に抱えているティポが、奪われた。何で、何でエリーゼを一人にしたの。こうなること、予測できなかった?

「奴らの狙いはお前じゃなかった…最初からティポだったんだ!」
「アルヴィン」

「俺は知らなかった!」


あの様子だと、本当に知らなかったのだろう。焦っているのが分かる。私も知らされていなかった。追いかけていったエリーゼの向かった先は、多分"王の狩場"だろう。同じ列にいたアルヴィンまで走り出し、背を押した。


「アルヴィン、アン!
お前達に任せた」
「ん、わかった」

「お前…」
「いいから、行くよ」


試してたのか、と小さく呟いたのは聞かなかったフリをした。闘技島を出て、小さい身体で懸命に走る姿を捉え、追った。やはり王の狩場へ向かっている。


「…腐ってやがる」
「ほんと、アルクノアって馬鹿ばっかり」

「アン、お前」
「なんて…ね」


にっこりと笑ってみせた。アルクノアは馬鹿ばかり。アルヴィン然り、イスラ然り。そして、あの男も。何か言いたそうなアルヴィンの腕を引いて、エリーゼを見失わないように王の狩場へ走った。



本当の、狙い



(ほんと、ヘタレなんだから)



20111009


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