高層マンションの地下駐車場に一台の車が止まった。
運転手は車から降りるエントランスへと向かう。
「お帰りなさいませ。」
受付の男は深夜にも関わらず疲れを見せぬ笑顔でにこやかに出迎えた。
しかしそれに何の関心も示さぬまま、挨拶をされた男は手持ちのキーで扉のロックを解除した。
エレベーターに乗り込み、目的の階のボタンを押す。
指定された階はそのマンションの最上階。
ゆっくりと上昇した後、目的の階へと到達するとドアが開かれ、男は足早にエレベーターホールを抜けた。
そして一つの部屋の前に着き、鍵を開ける無言のまま部屋へと入った。
「れいじ!」
ドアノブの回る音に反応したのか、ドアを開けると奥からパタパタと小さな足音がした。
少しだけたどたどしく、だけど満面の笑みで出迎えた少女を目にし、森次は安堵のため息をついた。
「おかえりなさい。」
「ただいま。」
挨拶を済ませると少女を自分の腕の中へと抱き寄せた。
風呂に入ったばかりなのだろうか、シャンプーの香りが鼻をくすぐった。
「今日もいい子にしていたか?」
少しだけ腕の力を弱め、少女の顔を覗く。
すると少女は先程と同じように笑みを浮かべて頷いた。
「うん。お料理もアイロンがけもしてないよ。」
「テレビやインターネットも見ていないな?」
「うん!」
元気よく答えると少女は目を輝かせて森次の顔を覗き返す。
褒めてくれと言わんばかりに爛々としていた。
その瞳と回答を聞き、森次はうっすらと笑みを浮かべた。
「そうか。いい子だな。」
貴方を撫で、額に唇を落とす。
すると少女は更に嬉しそうに微笑んだ。
「外にも出てないよ。」
「そうか。」
「れいじ以外誰ともお話してないよ。」
だから、と言って少女はぎゅうと森次に抱きつく。
「もっとご褒美頂戴。」
愛らしい見た目からは想像も出来ない言葉を紡ぐ。
だがそれに何の違和感も覚えていないのか、森次は先程よりも深く笑みを浮かべた。
「…そうだな。」
身体に回していた腕を両頬へと移し、少女の顔を固定する。
そっと唇を落とすと、すぐに貪るように深く口付ける。
唾液を流し込み、溢れだすのも気にせずただただ深く繋がろうと舌を絡ませる。
「……ん、あ。」
長い口付けが終わると少女の頬はにわかに赤く色づいていた。
「明日もいい子でいられるか?」
顎のラインを伝っている唾液を拭いながら尋ねると目を虚ろにしながらも少女は首を縦にふった。
「明日も、明後日も、ずっとれいじの言うこと聞くよ。れいじ以外とお話しないし、危ないこともしないし、お外にもでない。」
その返答をきくと森次は少女の頬に口付けた。
「だからね、もっともっとれいじに愛してほしいの。」
そして自らキスをした。
「れいじがいればいいの。れいじだけでいいの。」
その言葉をきくと森次は少女を抱きかかえて寝室へと向かった。
「ずっと愛してあげるよ、First Name。」
抱きかかえられながら、少女は今まで一番嬉しそうに笑った。
【寵愛の城】
(籠の中だなんて、出てみなければわからない。)
***
ごめんなさいorz
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