「恨めしい…。」

「は?」

「いや、憎らしい…。」

「First Name?」



長崎での戦いを終え、僕たちはJUDA本社へと帰ってきた。

今回は肉体よりも精神的な負荷が大きく、とても疲れた。


特に早瀬や城崎に関しては今後を大きく左右する出来ごとだっただけに精神的なショックは僕の比じゃないないだろう。


かくいう僕もそれなりに疲れてるわけで、今日は早く休もうと思って社員寮へ早々に戻ってきた。

何事もなくロビーを通りすぎようとするとそこのソファーに体育座りでクッションを抱きしめているFirst Nameが居た。


本来なら可愛らしい佇まいのはずなのだが目が据わっていたため、とても可愛らしくは見えなかった。

むしろ怖かった。




「サトルくん。今回の任務ってヴァーダントと迅雷だけの作戦だったよね?」

「へ?あ、ああその予定だったけど急遽森次さんから指令が入って全員長崎に「知ってます!!」


「そ、そう…。」


噛みつくような勢いで言葉を被せられた。

こんなに機嫌の悪いFirst Nameは初めてで驚いた。



「だいたいそれが気に入らないのよ。」

「え?」

「玲二の独断だってのが気に入らないの!
 なんで私は呼ばれなかったのよ!」

「それはFirst Nameが戦闘要員じゃなくて技術開発部の「分かってます!!」

「…すみません。」



また言葉を被せられ、何故か謝ってしまった。



「そんなの分かってるわよ!
 私は非戦闘員で戦地に行ったって何も出来ないってことくらい!
 足手まといになるのは分かってるけど……けど玲二が大変な思いをしてるのに…なにも出来ないなんて……。」



今度は打って変わってしおらしくなった。
と思ったら若干涙声になっていた。



「あ、足手まといなんかじゃないって!いつも俺らのために一生懸命整備してくれてるじゃん!」

「だけど…それだけじゃ玲二を助けてあげられないじゃない。」

「そんなことないよ!First Nameは森次さんの心の支えになってるよ!」

「でも「あれ〜?山下くんとFamily Nameさん。こんなとこでなにしてるんですか?」



僕は一生懸命First Nameを慰めていると道明寺が現れた。

助かった。どうにか手助けしたもらおうと思ったのもつかの間、またFirst Nameの目が据わってしまった。



「…道明寺も長崎行ったんだよね?」

「行きましたよ?なん「ほ、ほら!迅雷はもともと配備する予定だったし!迅雷のパイロットである道明寺がいるのは当たり前のことだよ!な!道明寺!」

「あ、うん。」



とにかくこれ以上話をややこしくしたくない僕は余計なことを言わせないように必死に言葉を繋いだ。



「ラインバレルの動きを止めた迅雷って道明寺でしょ?」

「そうですよ。なんでそのこと知ってるんですか?」

「リアルタイム映像見てたから。社長室で。」

「そうだったんだ。」


「…て……だ……。」


「え?」


俯きながら小さな声で呟かれ、耳に届かなかった。
するとFirst Nameは勢いよく顔を上げ…



「私だってヴァーダントに乗りたいぃぃぃいいいぃ!!!!!」


叫んだ。


「…First Name?」

「……え?」


あまりに唐突な出来ごとに道明寺も僕も驚きを隠せなかった。


「リアルタイムで見てたって言ったでしょ。
 見てたのよ!ヴァーダントに絵美ちゃんが乗ってるのを!」

「あ、ああ。そのことか…。」

「まぁあれは非常事態だったし…。」

「ヴァーダントに乗ったってことはヴァーダントの手を取ったんだろうね、絵美ちゃん。もしくは玲二の手?」


先ほどよりも据わった目が怖くて声が出なかった。


「で、でも森次さんの手を取ることなんてFamily Nameさんはよくあることじゃないですか。
今更そんなことで妬かなくても…。」

「コクピット…狭い密室……。」


道明寺の言葉など耳に入っていないようでFirst Nameはまたぶつぶつと呟きだした。


「私だってヴァーダントに乗りたいー!!!」

「ちょ、First Nameさん!!」

「何を叫んでいる。」



度重なる叫び声にどうしたものかと戸惑っていると森次さんが現れた。


「も、森次さぁん!」


天の助けの如く現れた森次さんが今日はとても神々しく見える。


「First Name妬いてるんですよ。自分より先に城崎をヴァーダントに乗せたから。」

「…そんなことで騒いでいたのか。」

「そんなことじゃない!私だってヴァーダントに乗りたかったんだもん!」


頬を膨らまして森次さんを威嚇するFirst Name。

だが森次さんはそれを鼻で笑って眼鏡を持ち上げた。









「ヴァーダントになど乗らなくてもいいだろう。私の上に何度も乗っているのだから。」


「なッ!」

「えッ!」

「わ。」


森次さんの思わぬ爆弾発言にFirst Nameと僕は顔を赤くした。

その傍らで道明寺は平然としていた。



「な、ななななんてこと言うのよ!サトルくんたちの前で!」


「本当のこと言ったまでだ。」


「わざわざ言うことじゃないでしょ!馬鹿玲二!」


「その馬鹿に毎回強請ってくるのは誰だ?」


First Nameは更に顔を赤くして口をパクパクさせていた。


「れ、玲二の大馬鹿ヤロー!!!」



そう叫びながらFirst Nameはその場を走り去った。


「大馬鹿野郎とは聞き捨てならないな。二度とそのようなことは言えないようにまた教え込む必要があるな。」


そう言った森次さんの口角は僅かに上がり、眼鏡の奥の瞳は楽しげに笑っていた。

そしてFirst Nameが走り去ったあとをゆっくりとした歩調で追って行ってしまった。




「いや〜、やっぱりあの二人ってかなり睦まじい仲なんだな。
 って山下くん大丈夫か〜?」

「へ?あ、ああ。だだ大丈夫、だよ。」



僕の中で、森次さんという人がよく分からなくなった出来事でした。




【Full Blast】




「そんなにヴァーダントに乗りたいなら乗せてやろう。
 ただし私の上にも乗ってもらうがな。」

「ヤダヤダヤダヤダ!離せ変態玲二!!」





***

なんか…すんませんorz
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