カタチのないもの


…まさかココを飾るわけにいかないよねぇ。

我は阿片窟の中を見回して苦笑する。




街はクリスマスイルミネーションで飾られ、人々は楽しげに笑っていて。

けれどココはいつも通り。



染み付いた阿片の臭い、虚ろな瞳で横たわる人々。
我が集めた可愛らしい猫(娘)たち…。


クリスマスなんて華やかなイベントとは無縁の、暗い暗い場所。

そこで生き続けた我も、そんなものとは無縁のはずなのに。

(会いたいなんて…許されるのかい?)

問いかけたのは自分にか、サンタにか。


もし本当にサンタがいるのだとしたら。


プレゼントは彼女がいい。


「我も、らしくない。」


いるかもわからない相手を探しに、街へと出て行った。



「おや……。」

外は美しい銀世界。こういうのをロマンチックというんだろう。

そんな感情を味わったことは一度もないけれど。


「さて…。」

どこから探せばいいのやら。

とりあえず適当に歩き回ってみることにした。



幸せそうな人々の横をすり抜け、小さな姿を探していく。


(自宅でパーティーでもしているだろうか)


その可能性は一番高い。

彼女にとってココはあまり意味のない場所のはずだ。




「ん?」

子供たちの明るい声。

視線を向けると、サンタの格好をした若い男性とその手にある風船。

どうやら子供たちに配っているらしい。



けれど、その中に。



(…………?)


見覚えのある、淡い黄色のドレス。

風船を手に笑うあの顔はまさしく。


「名前…?」

「…劉さん!」




こんな我にもサンタはプレゼントをくれるのか。

来年からも、たまには良いことをしてみよう。




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