七色の光


※9500hitキリリクその2、佐葵様へ捧げます。




セバスチャンの淹れてくれる紅茶は美味しいけれど、一人で飲むのは少し寂しい。

シエルも、もちろんセバスチャンも忙しいのはわかっているけれど。

「…どうなさいました?」

私の微妙な表情の変化に気づいたのだろう、有能は執事はすぐに様子を窺う。

「…いいえ、何でも。」

一口、淹れたての紅茶を味わいながらふと窓の外に瞳を向けた。

「……あ………。」

先程まで雨が降っていたのに、いつの間にか止んでいる。

それどころか。




「虹…………。」


「ああ、本当ですね。」


とても美しい、七色の光が見えた。

それは、別に珍しい現象というわけではない。

雨あがりに光がさせば、いつだって見られる光景。

それでも、私にはキセキに思えてしまう。

あの人と出会う日と同じだから。




「…そういえば、今日は劉様がお見えになるそうですよ。」

まるで私の心を見透かしたかのようなセバスチャンの言葉。

胸がドキンと跳ねる。

「劉が?」

「ええ。」

後はお好きに、とでも言うような瞳を向けた後、執事は一礼して部屋を出て行った。

私はすぐに服を整え、紅茶もそのままに外へと急ぐ。

向かう先は、薔薇のアーチ。




「……やぁ、名前。」

「……ごきげんよう、劉。」

お決まりの挨拶。

後ろから近づく劉は私の隣に立つと、あの時と同じように空を見上げた。

「また虹が出たね。」

「あの時と同じ。」



彼と初めて出会い、その姿に惹かれ、恋を覚えたあの日。

虹を見上げていた私の隣に立ち、虹が出たねと言った劉の顔がとても美しく見えたのを思い出す。

「貴方はいつも、虹の出る日に来るのね。」

「虹を渡って来ているからね。名前の姿を見ながら来るために。」

「…また適当なことを。」

このやりとりも、決まり切った挨拶と同じようなもの。

そして。


「愛しい女(ヒト)に逢うために虹を渡って来るなんて、ロマンチックだろう?」

「自分で言わなければカッコイイんだけれどね。」

これも、あの時と同じ。


あの時は「愛しい女」の意味がわからず、バカみたいに問い詰めたのだ。

さすがに劉も苦笑し、「名前を愛しているから来たんだよ。」と言ってくれた。

真っ赤になる私に、追い打ちをかけるように降ってきた口づけは私の心臓に悪い刺激を与えただろう。

……彼の言動は、いつだって心臓に悪いのだけれど。




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