あるクリスマスの日
あるクリスマスの日
〜劉vre.〜
不思議な手紙が届いてから1週間。
今日は待ちに待ったクリスマス。
部屋のカレンダーに丸をつけていた、その日だ。
俺は、もう何度も読んだその手紙を出してまた開いた。
「やぁ、名前くん。君は毎日良い子で過ごしているけれど、今年はいつも以上に良い子だったからプレゼントをあげよう。
クリスマスプレゼントを直接届けに行くよ。25日の夜、チャイムが鳴ったら君が出てくるんだよ?では25日に。
サンタクロースより。」
お母さんには言っていないけれど、友達にはサンタから手紙をもらったことがあるか聞いてみた。
誰ももらったことがないと言っていたけれど、本当にサンタからの手紙だろうか?
ワクワク、ドキドキ、でも本当か不安もある。
それも今日の夜になればわかることだ。
早く夜にならないかと、ずっと時計ばかり見てしまう。
何時になったら来るだろう。
お風呂に入って来ても大丈夫だろうか。
そんなことを考えながらサンタを待ち、時計の針が8時を指した時、チャイムが鳴った。
「っ・・・・・・!」
バタバタと階段を下り、勢いよくドアを開ける。
「やぁ、名前くんかい?元気な子だねぇ。」
赤い服に帽子、白いヒゲをつけた細い男の人がクスクス笑いながら立っていた。
「サンタさん?」
「そうだよ。少しお話がしたいからドアを閉めてくれるかい?お母さんに見つかってしまうよ。」
「あ・・・・。」
俺は急いでドアを閉め、サンタをじっと見上げる。
「我がサンタに見えないかい?」
「そうじゃないけど・・・本当に来てくれたんだ・・・。」
「行くと手紙を出しただろう?」
苦笑しながらサンタは持っていた袋から箱を出して渡してくれた。
受け取り、包みを開ける。
「・・・あ!」
出てきたのは今一番欲しかったゲーム。
「すごい、何でわかったの!?」
「我はサンタだからね。子供達の欲しいものは何だってわかるさ。」
当たり前だというように笑うサンタがカッコよく見えて、俺は尊敬の瞳で見上げ。
「サンタってすごい・・・。俺もサンタになりたい!」
「名前くんも?」
「うん!どうやったらサンタになれるの?」
「そうだねぇ・・・。」
サンタはヒゲに触れながらしばらく悩み、そしてゆっくり俺を見た。
「ずっと良い子で、お母さんやお友達が喜ぶことをしてあげたらサンタになれるよ。」
「本当?」
そんなことで良いのだろうか。
それなら今すぐにでもできるのに。
「本当だよ。でも、サンタは世界中の子供達にプレゼントを届けなくちゃいけない。だから、今言ったことを大人になっても続けていたら、大人になってからサンタになれるんだよ。」
「そっか・・・わかった!」
俺の返事にサンタは満足げに頷いて背を向けた。
「じゃあ、またね。」
そう言って数歩行った後・・・。
「・・・え?」
いない。
確かに今いたはずなのに、車も通っていないのに、いきなり消えてしまった。
「・・・サンタってすごい・・・!」
絶対いつかサンタになると心に誓い、家に入った。
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